2005年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  名雪園代

【奨励賞】失われていく

 

東シナ海にうかぶ小島、徳之島。そこは、私の父の故郷です。

 

小学校五年生の夏、二回目にそこを訪れた時のことでした。干潮になった海を見に行きま

した。白い砂浜が続いていて黒い岩のようなものがたくさんありました。私は「キレイな所

だな」と思い、はしゃいでいました。しかし、父や祖父は、

「魚とか貝が全然いないね。さんごも黒くなって死んでるし。変わっちゃったな」

と、少し悲しそうな顔で辺りを見つめていました。

 

私が「キレイ」と思ったその海は、父や祖父にとっては、「失われた海」でした。なぜ、か

つての海を失ってしまったのでしょう。

原因は、山の開墾により、川の上流から大量の泥、赤土が海に流れこみ、その大量の泥や

赤土がさんごたちをおおい、呼吸をふさいでしまったからです。そのため、さんごは死滅、海

草やさんごに住んでいた小魚もいなくなり、それをねらう大きな魚もいなくなってしまったの

です。

 

この徳之島はほんの一例です。世界のいろいろな場所で、自然のサイクルが人間の手によっ

てくずされていっています。それを元に戻すには、かなりの時間が必要です。くずすことよりも、

元に戻すことの方が何倍も難しいのです。徳之島の場合は、流れ出す泥を何とかする手段を

 

考え、とり除いた後、また、さんごの繁栄を待たなくてはなりません。これもかなりの時間

がかかるでしょう。

 

人間が利便性を求めた末の代償は、自然が背負っています。そのせいで、地球環境は悪化

し続けています。これからの世界を生きていく私たちには、「関係ない」ではすまされない問

題です。自然にすべて背負わせた代償が、私たちに戻ってきているのです。確かに便利なの

はいいことです。しかし、その便利によってもたらされる代償、私たちは、しっかりそのこと

を頭に入れて、行動していかないといけないと思います。

 

失われたものを、時間をかけてでも取り戻し、これ以上失うことのないようにしていかな

ければいけないのではないのでしょうか。徳之島の海にとどまらず、取り戻さなければなら

ないものは、たくさんあるのです。

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