【準ざぶん大賞】海とわたし
わたしは、海にほっかりと浮かぶ小さな島に生まれた。
一人で歩けるようになり、お話ができるようになったころから、父と一緒に海で泳ぐよう
になった。うきわなしで父につかまり、ぽちゃぽちゃとスイカが流れているような気分で、
沖の方まで泳いでいった。ゆれるたびに、しょっぱい塩の味がして、のどが痛くて泣いたこと
もあった。
けれど、わたしは、海をおそれることなく、毎日、父と泳いだ。手がしわしわになっても顔
が真っ赤に日焼けし、ひりひりしても、こりることなく泳ぎ続けた。
わたしが海を好きなように、魚たちも海が大好きだ。海にもぐると魚たちがついて来る。
そこには、なんともいえないきれいな音がひびいて、いやされる。
島の山から海を見るのも好きだ。毎日、違った色を見せる。波の高さも違う。そんな刻々
と変化していく海が大好きだ。海をずっと眺めていると、その時だけ悲しいことを忘れてし
まう。
だから、わたしは、つらいことがあると海を見る。そしたら、海がわたしに魔法をかけてく
れる。
海というのは、人間と同じだ。人間が怒ったり泣いたりするように、海もおだやかだったり、
しけたりする。そんな時、わたしは、こう思う。おだやかな顔で海がなぐさめてくれている。
荒々しい顔で説教してくれていると。
わたしは、よく海に話しかける。今日あったことを静かに話す。楽しかったこと、むかつ
いたこと、心配になったこと…。話しているとなんか、こう、つまっていたものが、すかっとな
くなっていく。そんな時も、ここに生まれてきて、本当によかったと思う。
わたしは、時々ふと考える。もしも周りに海がない場所に生まれていたら、わたしは、海
というものをどんな風に思っていただろう。海は、こわいものだと思うのだろうか。それとも、
楽しいものだと考えただろうか。そんなことを考えると、わたしは、今こうしていられて、と
ても幸せな気分になる。
わたしは、海に助けられて生きている。いつも前を見ると海がある。後も横も、ななめを
向いても、そこには海がある。いつでもどこでも海と一緒にいることができる。それはわた
しにとってとても幸せです。
わたしと海とは、離れることができないよう、生まれたときからそうなっているのだ。


