2004年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  百鬼丸

【準ざぶん大賞】海とわたし

わたしは、海にほっかりと浮かぶ小さな島に生まれた。

一人で歩けるようになり、お話ができるようになったころから、父と一緒に海で泳ぐよう

になった。うきわなしで父につかまり、ぽちゃぽちゃとスイカが流れているような気分で、

沖の方まで泳いでいった。ゆれるたびに、しょっぱい塩の味がして、のどが痛くて泣いたこと

もあった。

けれど、わたしは、海をおそれることなく、毎日、父と泳いだ。手がしわしわになっても顔

が真っ赤に日焼けし、ひりひりしても、こりることなく泳ぎ続けた。

わたしが海を好きなように、魚たちも海が大好きだ。海にもぐると魚たちがついて来る。

そこには、なんともいえないきれいな音がひびいて、いやされる。

島の山から海を見るのも好きだ。毎日、違った色を見せる。波の高さも違う。そんな刻々

と変化していく海が大好きだ。海をずっと眺めていると、その時だけ悲しいことを忘れてし

まう。

だから、わたしは、つらいことがあると海を見る。そしたら、海がわたしに魔法をかけてく

れる。

海というのは、人間と同じだ。人間が怒ったり泣いたりするように、海もおだやかだったり、

しけたりする。そんな時、わたしは、こう思う。おだやかな顔で海がなぐさめてくれている。

荒々しい顔で説教してくれていると。

わたしは、よく海に話しかける。今日あったことを静かに話す。楽しかったこと、むかつ

いたこと、心配になったこと…。話しているとなんか、こう、つまっていたものが、すかっとな

くなっていく。そんな時も、ここに生まれてきて、本当によかったと思う。

わたしは、時々ふと考える。もしも周りに海がない場所に生まれていたら、わたしは、海

というものをどんな風に思っていただろう。海は、こわいものだと思うのだろうか。それとも、

楽しいものだと考えただろうか。そんなことを考えると、わたしは、今こうしていられて、と

ても幸せな気分になる。

わたしは、海に助けられて生きている。いつも前を見ると海がある。後も横も、ななめを

向いても、そこには海がある。いつでもどこでも海と一緒にいることができる。それはわた

しにとってとても幸せです。

わたしと海とは、離れることができないよう、生まれたときからそうなっているのだ。

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