2008年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  切中優希子

【特別賞】母との足湯

「水の恵みといえば何ですか?」 と聞かれたら、たぶん私は、 「温泉」

と、すぐに答えると思います。それは、温泉は温められた地下水だし、私の住んでいる大鰐町は温泉の町です。JRの駅名が「大鰐駅」ではなく、「大鰐温泉駅」というほど、温泉がとても有名で、私もよく行きます。

 

ある日、母が、

「源泉の足湯が羽黒神社の近くにあるから、一緒に行ってみようか」 と誘ってくれました。私は、

「どこにあるかわかってるの」

と、心配になって聞いてみると、

「大丈夫、大丈夫」

と、自信満々の笑顔を見せました。ちょっと不安でしたが、行ってみることにしました。そこは、大鰐町では銀座街と呼ばれる商店街の通りに面していて、急いで行くと見過ごしてしまうほど、小さな一角でした。さっそくくつ下を脱いでお湯につかってみると、ちょっと熱いけれど、とても気持ちが良かったです。

 

熱さに足が慣れたころに、

「こんにちは」

と、一人のおばあちゃんがやってきました。母が、 「いつも、ここに来られるんですか?」

とたずねると、

「はい。この前、ちょっと足をけがして、その時からここに来てつかっているんです。そのせいか、今も少しずつだけど、治ってきているんですよ」 と、教えてくれました。私は、

「じゃぁ、私の足の虫さされも治るかな」 と言ったら、

「きっと治るよ」

と言ってくれ、なんだかうれしくなりました。

 

私は、虫さされはかゆいし、イライラしてきらいなので、教えてくれたおばあちゃんに感謝しつつ、温

泉は体に良いと改めて知り、温泉の良さと「大鰐」を見つめ直す機会になりました。

私の家族は父、母、姉、祖母、そして私の五人暮らしです。母は中学校の国語の教師をしています。母

の仕事は忙しく、夜遅く帰って来ることが多いです。家庭に入れば、皿洗いや洗濯などで、家でもいつも忙しいです。少し話しかけようとしても話しかけにくく、おしゃべりもしたいけど、ゆっくりできないことが多いです。

 

初めて足湯で、母とゆっくりおしゃべりできました。

「どう気分は」

「最高に気持ちいいよ。お母さんとおしゃべり、久しぶりだね」

 

足湯の中で、心と心がいやされていく気がしたのです。会話はあまり多くなかったのですが、心と心のふれ合いがあったような気がします。

 

水、そしてそれがもたらす温泉は、古くから人々の心をいやしてきたと聞いています。私はこの足湯か

ら、ふるさとのありがたさや、水がもたらすものの大切さを知りました。「水の恵み」とは、こういう自然を大切にすることだと知りました。私の町「大鰐」は本当の心のふるさとだと感じました。

足湯に誘ってくれて、ありがとう、お母さん。

 

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