【特別賞】母との足湯
「水の恵みといえば何ですか?」 と聞かれたら、たぶん私は、 「温泉」
と、すぐに答えると思います。それは、温泉は温められた地下水だし、私の住んでいる大鰐町は温泉の町です。JRの駅名が「大鰐駅」ではなく、「大鰐温泉駅」というほど、温泉がとても有名で、私もよく行きます。
ある日、母が、
「源泉の足湯が羽黒神社の近くにあるから、一緒に行ってみようか」 と誘ってくれました。私は、
「どこにあるかわかってるの」
と、心配になって聞いてみると、
「大丈夫、大丈夫」
と、自信満々の笑顔を見せました。ちょっと不安でしたが、行ってみることにしました。そこは、大鰐町では銀座街と呼ばれる商店街の通りに面していて、急いで行くと見過ごしてしまうほど、小さな一角でした。さっそくくつ下を脱いでお湯につかってみると、ちょっと熱いけれど、とても気持ちが良かったです。
熱さに足が慣れたころに、
「こんにちは」
と、一人のおばあちゃんがやってきました。母が、 「いつも、ここに来られるんですか?」
とたずねると、
「はい。この前、ちょっと足をけがして、その時からここに来てつかっているんです。そのせいか、今も少しずつだけど、治ってきているんですよ」 と、教えてくれました。私は、
「じゃぁ、私の足の虫さされも治るかな」 と言ったら、
「きっと治るよ」
と言ってくれ、なんだかうれしくなりました。
私は、虫さされはかゆいし、イライラしてきらいなので、教えてくれたおばあちゃんに感謝しつつ、温
泉は体に良いと改めて知り、温泉の良さと「大鰐」を見つめ直す機会になりました。
私の家族は父、母、姉、祖母、そして私の五人暮らしです。母は中学校の国語の教師をしています。母
の仕事は忙しく、夜遅く帰って来ることが多いです。家庭に入れば、皿洗いや洗濯などで、家でもいつも忙しいです。少し話しかけようとしても話しかけにくく、おしゃべりもしたいけど、ゆっくりできないことが多いです。
初めて足湯で、母とゆっくりおしゃべりできました。
「どう気分は」
「最高に気持ちいいよ。お母さんとおしゃべり、久しぶりだね」
足湯の中で、心と心がいやされていく気がしたのです。会話はあまり多くなかったのですが、心と心のふれ合いがあったような気がします。
水、そしてそれがもたらす温泉は、古くから人々の心をいやしてきたと聞いています。私はこの足湯か
ら、ふるさとのありがたさや、水がもたらすものの大切さを知りました。「水の恵み」とは、こういう自然を大切にすることだと知りました。私の町「大鰐」は本当の心のふるさとだと感じました。
足湯に誘ってくれて、ありがとう、お母さん。


