2004年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  西 のぼる

【準ざぶん大賞】水の旅

キーン、ブワッ、ビュビュビュー。

おっと、びっくり。ここは、地上から遠く離れた空。私の横を飛行機が通り過ぎたんです。

大丈夫、大丈夫。だって、私は軽いんです。みんなには見えないくらいの小さな小さな水の

子が私。風に乗ってあっちへふわふわ、こっちへふわふわ。

空の高い所から見下ろす地上はとってもきれい。山の深緑。田畑の緑に町の輝き。そして、

青く輝く海。お日様の光に銀色に光る、私たちの故郷。でも、もうすぐ、私の旅が始まります。

ほらね、仲間がたくさん集まってきたでしょ。みんながくっついて、たくさんの雨雲を作って

いるところなの。一億、十億、百億、千億…、数えられない程いっぱいの水の子供たちが、さ

あ、地上へ出発です。

ひゅーん、ひゅーん、ぱらぱらぱらん。着地成功。

私たちが降りたのは深い山の大きな木の葉っぱの上。

つるんとすべって、地面に着地。ここから、私の冒険が始まるの。

木々の中に入っていく水の子、新芽を育む水の子、動物の飲み水になる水の子もいるわ。

みんなで力を合わせて、この森を守っていくのよ。でも私は、地中深くしみこんで、大人の

水になっていく。

さらさらさらさら…。あれ?何の音かしら? ぽとん、ぽとん、ぴととととん。冷たくっていい気持ち。 「こんにちは。久しぶり」

一足先に地上に降りた仲間たちとの再会です。地下を流れる私たちは、めぐりめぐって山

を潤し、何年もかけて湧き水や小さなせせらぎとなって地表に出てくるの。

この間に私たちは、山の生きる力をいっぱいもらうのよ。この生きる力を下流に運ぶのが、

山の水の仕事なの。

さあ、ここからが川下りの始まりよ。谷川をかけぬけて、滝をとびおりて、大きな川へ突

入!取水口からみんなの家の水道へ、田畑へ。でも、私はまだまだ旅を続けたい。行ける所

まで行ってみたい。

いつの間にか穏やかになった流れに乗って、ゆったり、のったり。

たくさんの仲間との出会い、別れてきたけれど、私の旅もそろそろ終わりに近づいてきた

みたい。ほらね、聞こえてきた。私を迎える仲間の声。

ざぶーん、ざざーんざぶーん、ざざーん

見える?空の上の仲間たち。私も青く、銀色に輝いているかしら?

みんな生きとし生けるもの、全てをうるおし育んで、やがてまた、小さな水の子になって空

に戻り、また、旅を繰り返す。

私たちは、みんなの命を支える水。汚さないで。大切にして。

空気の中に、土の中に、みんなの体の中に、いつだって私たちはいるのだから。

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