2002年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  西 のぼる

【準ざぶん大賞】海-「ぼくの兄貴」

海はぼくの心を穏やかにしてくれる。海はぼくにたくさんの恵みを与えてくれる。海はぼくと共に毎日生活している。海はぼくの兄貴なんだ。

 ぼくの家から海までは、歩いて五分程かかる。夏になると、一人で潜りに行ったり、父と一緒に行く。太陽の光が容赦なく照りつける暑い夏。毎日のように海へ行って潜る。海までの道のりは、全力疾走していく。そうすれば、二分程で海につく。海岸で海パン一丁に着がえて、水中メガネを着ける。そしてサザエを入れるための網も持って、さあ準備OK。海の中へ「ザッブーン」と、いきおいよく飛び込んでいく。その瞬間は何とも言えない気持ち良さが、ぼくの体を包む。どう表現すればいいのだろうか。海まで走ってきて、火照った体がその瞬間、瑞々しく生き返ったようになる。まるで、花に水をかけてあげたみたいに。

 そして、ぼくはポイントを目指して泳いでいく。この泳いでいく時も、とても気持ち良いのだ。沖へ沖へと進んでいくと、水温が少しずつ下がって、ひんやりとするのだ。これがまた、たまらなく気持ち良い。ポイントへ着くと、大きく深呼吸をして、水中へと潜っていく。深ければ深いほど、ひんやりして気持ち良い。海の中には、生の水族館が広がっている。たくさんの魚が群れをなして泳いでいく。底には、いろんな種類の海藻がところせましと生えている。岩場にはサザエをはじめ、イソギンチャクやカニ、ヒトデ、その他多数の生き物が生息している。ぼくはサザエを探す。毎年、通い続けることによって、サザエがどんな場所を好んで生息しているかが分かるようになった。そんな場所を探して、一つ、二つ、三つとたくさん採って網がいっぱいになると、海岸まで行き、網を取り換えてまたサザエを採る。こうして、たくさん採ると海から上がる。この時もまた、いい気持になる。ひえた体で海から上がると、太陽の光に照らされて温かくなるのだ。この瞬間も一つの楽しみだ。

 ぼくは、幼いころから海と共に生活を送ってきた。近くに同級生がいなく、遊び相手がいなかったのでよく、海へ行って遊んだ。水きり、魚釣り、岩場の探検。他にも、数えきれないほどの遊びをしてきた。ぼくが海で遊ぶようになったのは、父からその楽しさを教えてもらったからだ。父も、幼いころから毎日のように海へ行って遊んでいたという。そしてそれから四十年以上がたった今でも、仕事から帰ってくると、漁をするために一目散に海へと向かう。父は言う。「こんないい海、どこにもないぞ。」と。祖父もまた、毎日のように漁をしている。七十才を越えているというのに、僕に負けないぐらいの元気さだ。祖父も父も、この海のよさにひかれて、この地で海と共に生活を送っている。二人はぼくによく、こんな事を言う。「お前も、この海が大好きやろう。」って。ぼくは、必ずこう答える。「あたりまえやろ。じいちゃんと、とうちゃんの姿見て育ってきてんから。大好きや。オレの兄貴みたいや。」と。

 祖父から父へ、父からぼくへと伝わってきた海のよさ。僕の手でしっかりと守っていき、自分の子供達にも絶対に伝えようと思う。兄貴のよさを。

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