【準ざぶん大賞】夏休み
2022年9月2日
もうすぐ 長い夏休みも終わろうとする
最後の日曜日に まだ 宿題のワークは
数ページ空白のままだったけど
そのことは僕の頭の中の重要性としては
ホンの数パーセントにしかすぎなかったし…
夏休みになる頃には
それらをすべてやり終えていたと
思われる友人Y君をさそって
市民プールへ行った
海のすぐ傍にある そのプールからは
屋島や 鬼が島が よく見えた
かなり早い水流に 身をまかせて
僕は くるくると回りながら
視界のなかで
プールと海は 海とプールは 交じり合って
ひとつの大きな海になっていく
僕の口に入ったプールの水が
本当はそうじゃないんだけど
少し塩辛かったように 感じたのも
僕の見たままが
僕の感じ方だったのかもしれない
雲の影と追いかけっこしながら
このまま ずっと どこまでも
世界中の海を 泳いでいける 気がした
僕のリュックサックには
千三百五十円が入っている財布と
母に頼みこんで買ってもらった エアガンと
コンビニのそばで拾った サングラスと
なぜか 握力を鍛える道具と
キャンディが 確か四個…入っている
たったそれだけで 世界中を旅するのが
困難だということくらいは
僕の 脳みそでも分かる
だから 僕は僕の想像の中だけで
旅をすることにした
プールのすぐ外は 瀬戸内海だ
東に行けば 太平洋
もしも西なら 日本海だ
想像だけなら 氷でおおわれた南極の海にも
三千メートルの深海にも
サメにも食われることなく南の海にも
ピラニアのいるアマゾン川にでも
どこにだって 泳いで行ける
そして すぐに 帰って来れる
いつのまにか すぐそばにいたY君が
「ちょっと休憩しない?」
帰ってきた僕は Y君と
プールサイドで冷たいコーラを飲んだ


