【特別賞】水晶村のむかしむかし
昔むかし、山梨県に「雨村」と呼ばれた村がありました。なぜ「雨村」なのかというと、雨がしょっ
ちゅう降る村であったからでございます。ですから大人達は少ししか働くことができませんでした。子ども達は外で少ししか遊べませんでした。雨村の人達はとても雨をきらっておりました。
さて、ある日、雨村の子ども達が山にくり拾いに行きました。夢中になってくりを拾っておりますと、
「あっ、雨だ」
とだれかがさけびました。
「せっかくのくり拾いが台無しだよう」
「雨の裏切り者」
「雨なんて降るな」
子ども達は口々にさけびながら、とぼとぼ帰りました。 雨雲はそれを聞き、とても傷つきました。
「なんだって。雨は作物にとっても、人間にとっても、必要なのに。降るな、なんてひどいよう」
悲しみのあまり、雨雲はどこか知らない所にかくれてしまいました。
雨雲がいなくなった日から、雨村とは思えないほどの、よいお天気が続きました。村の人達は大喜びで
畑を耕したり、働いたりしました。子ども達は朝から晩まで遊びました。これほど雨村にとってうれしい日はなかったでしょう。
けれども、雨が降らないので作物がとれなくなっていき、「雨が降ってほしい…」と、思い始めました。
さて、この村には不思議な男の子がおりました。まわりの人は「雨はきらい」と言うのに、この男の子
は「雨が好き」と言うのです。雨の日は喜んで外へ出て、土でどろ団子を作って遊んでいるのです。男の子は最近、雨が降らないので、たいくつしていました。そこで川に行って遊んでいますと、きらきら光る透き通った石を見つけました。
「おや、これはなんだろう」
と思ってさわってみますと、雨雲が現れました。
「ぼくは雨雲だ。きみは雨雲がきらいじゃないかい」
と聞くと、
「ぼく雨雲くんのこと好きだよ。村に雨を降らせておくれよ。さみしいよ」
と言ったのです。雨雲はうれしくなって涙を流しました。すると、地面に落ちた涙は次々と水晶になっ
ていきました。きれいに輝く水晶でした。それ以来、この辺りでは紅水晶や針水晶がたくさんとれるようになったそうです。そして、今まで雨村の人達が困っていた川のはんらんも、なくなったそうです。
「やっぱり雨は私達にとって必ず必要なんだ。雨が降るからこそ、作物がよく育って、私達は生きることができるんだ」
このことに気付いた雨村の人達は、雨を大切にするようになったそうです。そして後に雨村は「水晶
村」と呼ばれて、栄えるようになりました。


