2006年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  西 のぼる

【準ざぶん大賞】海がくれたもの

「海?行きたくないな」

家族旅行が沖縄と聞いて、私はがっかりした。水着に着替えなくてはならないし、水から

上がるとべとべとするし、髪はごわごわになるし、海はあまり好きではない。それでも

「来年は中学生だから遠出しよう」

と父や母、弟に説得されて飛行機に乗った。

八月四日、私は、生まれて初めて沖縄の海を見た。遠くから見ると緑色で、近づくと、水

が透き通っていた。いわきの海とは違う。 「太平洋ともつながっているんだよね」

思わずつぶやいてしまった。

店のおじさんからマリンスーツとライフジャケットを借りて、母とシーカヤックに乗り込

んだ。青の洞窟と言うところまで行く。ぐいと力を入れてオールをこぐと、円を描くように

水が広がっていき、とてもきれいだった。

浜辺をはなれると、緑色の水は水色になった。下の岩場が見えるほど透き通っていた。し
ばらくこいでいると、海が暗い青色になった。 「海が暗くなったね。ここあたりは深いんだろうね」

私は不安になりながら母に言った。

洞窟に着いた。シュノーケルとフィンという魚のような形をしたものを足に取り付け、海

にでた。シュノーケルで息をしながら水へ顔をよせると、魚達がいっぱいいた。

「うわ〜!きれいだ。色がすごい鮮やかだよ」

カラフルな魚達に私は夢中になった。まるで自分が魚になったような気分だった。手を伸

ばせば届く距離だ。もう自分だけの世界に入ったような感じがした。 「洞窟の中に入りましょう」

おじさんに言われて、ついていった。暗くて静かだった。天井が高く、鍾乳洞のようだっ

た。水の中も暗かった。魚は黒い影となって見えた。外の世界とはまた違った世界が広がっ

ているのを感じた。

引き返すためにふり返って驚いた。外の光が水面に反射し、洞窟が青く輝いているのだ。

「きれいだなぁ。何もかもきれいにみえる」

下を泳いでいるダイバーから出るあわがシャボン玉のようにのぼってくる。小さな無数の

あわは、炭酸のようだったが、大きなあわはふにゃふにゃと形を変えながら私に迫ってきた。

「あわさえもきれいだね」

隣で母の声がした。同じ事を考えていたと思った。自然の美しさを改めて感じた。太陽の

光、波の動き、水の透明度、カラフルな魚たち。今まで感じたことのない感動だった。

「海なんてつまらない」

正直、出発前はそう思っていた。しかし沖縄の海を見て、水の中の世界を知り、私の考え

は変わった。海は美しく、たくさんの命を育てている。そのことに気付けて良かったと思う。

五年生の社会科で「珊瑚礁が危ない」という事を学んだ。地球温暖化で海面の温度が上昇

することが原因だ。沖縄の海を実際に見てきた今なら、それがどれだけ大変なことか想像

がつく。あの海の美しさを守りたい。もっとたくさんの人に知ってもらいたい。そのために、

私も地球温暖化を真剣に考えたいと思う。例えば電気をこまめに消し、クーラーやヒーター

に頼りすぎない工夫をしたい。

我が家では打ち水や青系の置物、風鈴などでクーラーを使わず夏を過ごしている。また、

ゴミを減らすのも対策になると思う。ちらしの裏を使ってメモ用紙を作ったり、小さくなっ

た服はあげたり、牛乳パックやトレー、アルミ缶のリサイクルをしたりすることができる。

海はつながっている。空気もつながっている。だから福島のこの地でがんばることは、い

わきの海だけでなく、沖縄の海を守ることにもつながると思う。私の小さな力が、海を守る

ことを忘れないでいたい。

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