2005年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  坂井直樹

【奨励賞】やっと見られるんだね

家族といっしょに沖縄旅行へ行った。

与那国島の港に着いた。

そこには船があった。乗って右側に階段があった。 「降りていいの?」

「いいよ」

お父さんが言った。その階段は急だった。ゆっくりゆっくり降りていった。 そこには・・・底まで見える透明な海が広がっていた。 「へっ!」

こんなにきれいな海だとは思ってもみなかった。びっくりだ。と思っていると、船が動いた。

「グン」

船はだんだん速くなり、海の底の濃さも変わってきた。ガラス窓をのぞいたら、青と黄色の

熱帯魚が前から横切った。海の底からゆっくりゆっくり泳いでいるものが見えた。

「あっ、カメだ」

海の中なのに空をとんでいるようだった。人が乗れるくらいの大きさだった。前足をゆっくり

かき、ゆうゆうと泳いでいた。まるで鳥がゆっくり飛んでいるようだった。こんな真近かで見

るのは初めてだ。 「うっ!」

海を見ていると、急に頭が痛くなってきた。苦しかった。上を向いているのも辛かった。なぜ

なら風景が見えないからだ。もうだめだと思い、お父さんに 「気持ち悪い」

と言ったらお母さんがビニール袋をぼくに渡した。 心の中で「ありがとう」とお母さんに言った。

いっぱい吐いた。

吐いていると船のお兄さんが階段を降りてぼくに水の入ったコップを差し出した。

「大丈夫?」

「はい、ありがとうございます」

五分くらい上を向いていると、お姉さんが降りてきて 「気持ち悪い?」

と聞いた。

「はい」

気が抜けたように返事した。

「じゃあ、ここに寝て」

と言われ、床に寝た。

「またお兄さんがコップを持ってきてくれた」

お姉さんが薬を出した。ぼくは薬をもらって、お兄さんから水の入ったコップを手渡された。

ぼくはそれを飲んだ。

ずっと目をつぶっていた。

「着いたぞ」

お父さんが教えてくれた。

起きたらゴツゴツした岩と、人間が作ったような階段があった。 「グーグー」

すぐに寝てしまった。

岩は少ししか見られなかった。

「港についたぞ」

もう着いたのかと思った。しかしなかなか起きられなかった。 船から下りたらお母さんが、

「海底遺跡すごかったね」

と言っていた。

ぼくは遺跡を少ししか見られなかったけれど、きれいな海や野生のカメを見られて良かった。
また見に来る時も変わらないで欲しいと、心の中でつぶやいた。

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