2008年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  近藤 賢

【特別賞】地球の約束

「ただいま…」

 

たけしはベッドに腰を下ろしてため息をついた。それは、学校での昼休みの出来事。たけしは、友達と

の話に夢中になり、水を出しっぱなしにしていて先生に注意を受けたのだ。 「なんだよ…一分間くらい水を出しっぱなしにしていたって、いいじゃないか」 その瞬間、目の前が光った。

 

たけしの机の上には小さな小さなオルゴールが置いてあった。ふたを開けたらいいのか、開けてはいけ
ないのか。

たけしは、ちょっぴり迷ったが、 「開けていいよね…」

そうつぶやいて、ふたを開けた。きれいな音をかなでるオルゴール。それと同時に小さな地球が出てきた。

「やあ、ぼくは地球のチイキュっていうんだ!」

「なんで、ぼくのところにきたの…?それときみ…なに?」

「きみ、さっき水を出しっぱなしにしたっていったよね。その言葉できみの住んでいる地球がきずついているんだよ」

たけしは、その一言を聞いてこう言った。

「それは…悪いことだってわかったよ…。それに、ぼく、エコだってしているよ!」「きみは、本当に地球のためを思っているの?前もまだ使える鉛筆を捨てたり、ノートを捨てたりしたね?」

ぼくは何も言えなくなった。もちろん、チイキュの言っていることは確かだ。本当はエコなんて少ししかしていない。

「ごめん。ぼくウソついてた。本当は地球のことなんて、ぜんぜん考えていなかったんだ…」

「いつも見てたんだ。きみの行動。いけない行動は見のがさないよ!」 「チイキュはぼくのことしか見てないの?」

チイキュは小さく顔を横に振った。

「地球の子供たち、みんなを見ているよ」

「たけしー、おやつよ!食べないの?」

お母さんが言った。

「今行くよー。とにかくチイキュ、待っててね」

 

たけしは急いで一階へ向かった。一階からジャーという音が聞こえた。リビングに行くと、お母さんが

お皿をふきながら水を出しっぱなしにしていた。 「お母さん、水を出しっぱなしにしちゃだめだよ」

たけしは言った。自然に声が出ていた。お母さんはとっさに蛇口を閉めてこう言った。

「そうね。うっかり閉めるのを忘れてたわ。いつからそんなにえらくなったのかしらね」

「チイ…いやっ、何でもない。ぼくは当たり前のことを言っただけだよ」

あやうくチイキュのことを言いそうになった。でもチイキュが注意してくれたから言えたこと。たけしは心の中でチイキュに感謝していた。

「ごちそうさま…」

ぼくはおやつを食べてから、急いで二階へ上がった。 「チイキュ!お待たせ。待った?」

床を見ると、一枚の手紙が置いてあった。

「待っててっていったのに…」

そうつぶやきながら、手紙を手に取った。

たけしへ 

突然、黙っていなくなってゴメン。たけしだけじゃないから、ね…。教えてあげるね。たけしができる

地球へのエコ、まずは「無駄使いは禁止!」簡単にみえて簡単ではないんだけど…。例えばトイレット

ペーパーの無駄使い、よくあるよね!それと、テレビや電気のつけっぱなし!あとは…使えるものを

捨てない。そこからどんどんレベルを上げていこう。最後には車を買い換えたり…無理だと思うかもしれないけど頑張って!きっとたけしならできるよ。信じてるからね!

あと、お母さんが蛇口を閉め忘れたでしょ?その時、たけしえらかったね。そういうことがエコへの

第一歩だよ。今まで会った子供たちは、たけしのようにすぐにエコに取り組める子はいなかったよ。いろんな意味でチイキュ、たけしに会えてすごく良かったよ。きっとこれからたけしは、地球にやさしい大人になれると思うよ。ぼくは君との出会いを生かして、これから全国の子供たちにアドバイスしてくるよ! 

たけしは誰にも負けないぐらい地球にやさしい人になってね。今度は五年後に会いたいなぁ。五年後の

たけしはどうなってるのかな?楽しみにしているからね!

チイキュより

「五年後かぁ…ぼくはどうなっているのかな」

 

たけしは窓の外を見て、

「絶対だよ!約束だからねぇー。楽しみにしてるから」

と大声で叫んだ。

「たけしー、おやつよ!食べないの?」

気がつくとベッドの上にいた。今のは夢だったのか?夢じゃなかったのか。 「夢だったのか…な。夢だったのかあ」

ふと机の上を見るとオルゴールがあった。そっとオルゴールをすくい上げ、チイキュがくれたオルゴールを五分くらい見続けた。

「やっぱりいたんだ。チイキュ、ありがとう!」

窓の外を見上げた。一瞬、雲がチイキュのように見え、その雲が笑っているように見えた。

五年後…

  

月日はあっという間に過ぎた。たけしはチイキュの約束をもう忘れていた。毎日、同じような生活をし

ていた。たけしはもう高校生。学校から帰ると、勉強に励んでいた。 「たけし〜。たけし宛に郵便が届いたわよ〜!」

たけしは、誰から来たか心当たりがなかった。首をかしげながら、お母さんの持っている封筒を受け取った。二階へ上がり、封を開けると、中には一枚の手紙が入っていた。

たけしへ 

久しぶりだね。元気?たけしがこの手紙を読んでいるころには、チイキュがもうちょっとでたけしの

家に着くころだ。オルゴール大事にしてる?ちゃんとエコしてる?手紙で話すことはこれだけさ!

あとは、直接会って話そうね。

チイキュより

 

たけしは、しばらくチイキュが来ないかと窓の外を見ていた。すると、後ろが突然光った。光ったのは

オルゴールだった。

「やぁ、久しぶり」たけしとチイキュはしばらくおしゃべりをした。面白い話もした。 「チイキュ、しばらく会ってなかったから…なんか…老けたね」 「ちょっとー、どういう意味?ひどいなー」

たけしは、二つの意味でそういったのだ。一つは本当に老けたから。そしてもう一つは…エコの達人って感じがしたからだ。一つめの理由は怒られそうだから、たけしは何も言わなかった。

「車、買い換えたよ。そろそろ換えなきゃ、もう乗れないぐらいだったしね。せっかくだからエコの車に換えようって…すごいでしょ」

たけしは自慢気にチイキュに言った。これでちょっとはエコの達人に近づいたからだった。

「無駄使いもしてない?」 「もっちろん!」

たけしとチイキュはお互いに笑いかけた。たけしは、このまま楽しい時間がずっと続け、と心の中で思っていた。もちろんチイキュもだ。考えることは同じだった。でも話をしているうちにどんどん日が暮れていった。そして、

「チイキュ、もうそろそろ行かなきゃ、じゃあね!」 チイキュは窓から出ようとした。

「待って、これが本当のお別れ?もう会えないんだよね 」チイキュは、

「大丈夫、またきっと会えるよ。いつ会えるか分からないけど、きっと…いや、絶対に会える」

と言い残して、窓から外へ出て行った。たけしは、

「大人のぼくと今度は会おう!チイキュの言ったその言葉、忘れないから!」

たけしの言葉にチイキュはふり向き、何かを言った。その言葉は聞き取れなかったが、たけしにかすかに聞こえた最後の言葉。

「約束」という言葉は、大人になったらチイキュみたいなエコの達人になっているという約束だと思い、その約束を果たすことを決意した。

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