【ざぶん文化賞】川に思いを乗せて
群馬県上野村に旅行に行った。宿泊先の宿舎のそばに、川が流れていた。とてもきれいで、
神流川という川だった。水は透き通り、水の深いところはエメラルドグリーンで吸い込まれ
そう。川は蛇行して流れていて、上流を見ると、鮎釣りをしている人の姿が見えた。下流を
見ると、川はカーブして、しげった緑の向こうへ流れ、先は見えない。どこかちがう世界に
つながっているような気がした。
その川で、私はとても楽しく遊んだ。石を積んで水の流れを変えたり、浮き輪で流れたり、
水中めがねで小さな魚を見つけたりした。とっても幸せな気分だった。
旅行から帰った翌日、テレビのニュースで神流川のことが放送されていた。神流川の流れ
る上野村の山に、二十三年前飛行機が落ちて大勢の人が亡くなり、その遺族が川に灯ろうを
流しているというものだった。あのきれいな川に亡くなった人への思いをたくした灯ろうを
流す。灯ろうは水の流れにまかせてゆっくりと流れていっただろう。川がまっすぐなうちは、
流した人にも灯ろうと自分の思いが見えたと思う。
けれど川がまがってしまえば、灯ろうも自分の思いも見えなくなってしまう。私は川で遊
んだ時に、下流を見て、どこかちがう世界につながっているように感じたことを思いだした。
灯ろうと遺族の思いは、亡くなった人のところにきっと届くにちがいない。
私は川で遊んで、とても幸せな気持ちになったから、川に幸せな思いを流した。飛行機事
故の遺族の方は、悲しみや願いを流した。水のきれいな川だから、人の思いを乗せることが
できるように感じた。
楽しい気持ち、幸せな気持ち、悲しい気持ち、願いごと、人には色いろないっぱいの思い
がある。きれいな川でなければ、人の思いを渡すことはできないと思う。日本の多くの川が、
人の思いを乗せられる、きれいな川であってほしいと思った。


