2007年度受賞作品, ARTIST, AWARD, 荒木 崇 【奨励賞】水の記憶 2022年8月30日 ムシャクシャしていた。 理由は特にない、というか、本当はわかっている。最近母の何気ないひと言が突き刺さってくる感じだ からだ。 その日は、お風呂にろうそくを入れてみた。赤い器に小さな桃色のろうそくを入れて、水面に浮かべて みるとお風呂場はたちまち夕焼けに変わる。 ちらちらちらちら光る太陽に、ゆらゆらゆらゆら揺れる暗闇。手を水面に振りかざすと、水面の中に うっすらと手が映し出される。 水の中にいる私の足もいっしょに見える。それはまるで、現と夢の鏡のよう。炎をじっと見つめるたび に、本当に夢の中へと落ちてしまいそうになる。目を閉じてもまぶたの向こうに太陽が見える。ほの赤い 光を感じながら。お風呂のお湯に身をまかせる。 ああ!この感じ!昔体験したことがある!それは一体いつの時か。母のお腹にいた時か。 次第にいらだちは水のゆらめきの中に溶けていく。思いをこめて風を吹かせると、小さな太陽は消え た。まだ暗闇の水中に留まっていたかった。 でも私はもう水から出なくてはならないのだ。一人で歩いていくために。 前 【特別賞】小さな命 最近 【特別賞】洞くつのさらに奥 こちらもおすすめ 【準ざぶん大賞】断ち切れ、水と油の関係 2022年8月10日 【ざぶん文化賞】夏景色 2022年7月8日 【特別賞】紙コップにあふれる水 2022年8月19日 コメントを残す コメントをキャンセルメールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です名前 ※ メール ※ サイト 次回のコメントで使用するためブラウザーに自分の名前、メールアドレス、サイトを保存する。 コメント