2009年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  西 のぼる

【準ざぶん大賞】雪どけ水の恵み

「今年は雪が少なかったな」

「うん。でも、雪掘りも少なくて助かったじゃん」

「いや、雪が降らないと、畑や田んぼの仕事が大変なんだ」 「どうして」

「雪どけ水がないからさ」

疲れた様子で畑から帰ってきた父が、僕に話しかける。

僕の住んでいる上越市は豪雪地で、毎年たくさんの雪が降ります。雪国に住む人々は、あ

り余る雪に苦労する反面、それを利用して暮らしてきました。例えば、水の確保が重要な棚

田の田植え。もちろん、雪どけ水が必要で、雪不足の年には田植えができないなどの被害が

出るのだそうです。

僕は今まで、雪の辛さは知っていましたが、その使い道など、まったく知りませんでした。

ですから、雪が降れば、生活が不便になることばかりに目がいって、僕は雪が好きではあり

ませんでした。今年は雪が少なかったので良かったと自分勝手に思っていましたが、実はそ

うではなかったのです。

薫風にのって運ばれてくる木々や花々の清々しいにおい。近くで働いている方々の姿。遠

くを見ると、妙高に「はね馬」がくっきりと浮かんでいる。僕は思いっきり深呼吸をしまし

た。

今年初めて畑に行ったとき、父が、

「こんなに用水の水が少ないなんて、初めてだ。今年は、本当に雪が少なかったんだな」

と、しみじみ言いました。毎年、絶え間なく流れていた用水の水も、今年は目を見張るほ

ど少なかったのだそうです。水は農業にはなくてはならない大切な要素です。そのため、雪

どけ水が少ないと、思い通りの作業ができないのです。

さらに、雪どけ水はとてもきれいなので、お米を作るにしても、野菜を作るにしても、と

ても重要になってくるのです。

父から雪どけ水の話を聞いているうちに、僕は水について興味を持ち始め、雪どけ水につ

いて調べてみました。すると、雪どけ水は農業のほかにも、発電に使われていることがわか

りました。JR東日本は新潟県内に三つの水力発電所を持っており、山手線など首都圏のJ

Rに供給しています。JR東日本で使用する全発電の四分の一が、新潟県内の水力発電所で

まかなわれているのだそうです。

他にもたくさん調べましたが、やはり棚田の米作りに一番興味を持ちました。おいしい米

を作るのには、やはりよい水が必要になってきます。棚田に引き込まれる水は、山の上から

流れてきた雪どけ水や雨水です。これには生活排水が混ざることがなく、とてもきれいなの

です。棚田が時に「天水田」と呼ばれるのはそのためです。「天水田」とは、雪どけ水や湧

き水などを貯水していて、きれいな天然雪どけ水が常に流れ込む、最高の環境の田んぼです。

雪国では、あり余るほど降る雪を昔から有効に使ってきたのでした。そのため、おいしい

米や野菜ができるのです。しかし、近年の地球温暖化、環境問題で雪はどんどん減りつつあ

ります。

僕は、雪国ならではの美しい水をこれからも大切にしていくつもりです。

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