【ざぶん大賞】豊かな海のために
私の祖母の家の庭には、アカテガニやベンケイガニがいます。暖かくなると、庭石の下か
らはいだしてきます。小さいころの私たちは、バケツと火ばさみを持ってそれを追いかける
のが楽しみの一つでした。たまに穴の奥にこもっているカニを見つけると、糸の先にキュウ
リをぶらさげて、釣ってみたりしました。
なかなか用心深くて、足音を聞いただけですぐにかくれてしまって、なかなかつかまえら
れないこのカニですが、夏の夕方になると申し合わせたように穴から出てくるときがありま
す。それは、決まって満月が近づいた日の夕方、海に水が大きくふくれ上がったように見え
る大潮の日です。穴から出てきたカニたちは、庭を通り過ぎてアスファルトの道路も渡り、
次々に海へと入っていきます。そのカニたちのおなかには、小さな小さな卵がかかえられて
いるのです。
このカニたちは、普段は陸の上で生活していますが、卵は海の中に産むのだそうです。だ
れに教えられたのでもないのに、卵を産むときになるとみんなそろって海に入っていく姿は、
見ていてとても不思議な気がします。自分が生まれた海の記憶を大人になっても忘れず持っ
ているのでしょうか。すべての生き物が海から生まれたと聞いたことがありますが、陸地で
暮らすようになった今も、このカニたちは卵を育てるゆりかごとして海を選んでいるのです。
道路の幅を広げる工事や崖崩れを防止するための工事などにともない、しばらく数が減っ
ていたこのカニたちですが、最近また、少しずつ姿をよく見かけるようになってきました。
きっと、海の中で育った子ガニたちが、たくましく生き延び、陸地に帰ってきたのだと思い
ます。
海や川を行き来する魚も多いと聞きます。先日、川に住む魚だとばかり思っていたアユが、
川で生まれた後、海で大きく育って川へ帰ってくると聞いて、驚いたのを思い出しました。
広い広い海には、たくさんの命を生み出し、育てていくすばらしい力があるのだということ
を改めて感じました。
私の住む二瓶町にも、海があります。この海をきれいにしていくことは、そこに住む魚た
ちのためになるだけでなく、私たち人間のためにもなることにつながるのです。きっと今も、
夏の太陽に輝く波の下にも、たくさんの命が生まれ、育っているのでしょう。
いつまでも豊かな海を残していけるように私たちにできることは、いろいろあると思いま
す。この夏から、我が家では、洗濯に粉石けんを使い始めました。これからも、自分ででき
ることを考え、それを、実践していきたいと思います。


