2008年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  増田 守世

【特別賞】富士山と富士川

 

富士山と富士川は仲よしです。富士川は富士山からの雪どけ水が流れてくるので、交流も多いからで

す。もしかしたら、二人とも近くに住んでいるし名前も似ているので、親戚なのかもしれません。

 

でも、二人は近くにいるにもかかわらず、それぞれの仕事に忙しくて、ふだんは話すこともあまりあり

ませんが、年に一度ぐらいは話をします。

「やあ。富士山、久しぶりだね。今日も登山のお客さんがたくさん来てくれていて、いいなぁ…」

「そうかな。たくさんの人が来てくれるのはとてもうれしいけれど、大変なこともあるんだよ」

「そんなことないでしょう。君は日本で一番高い山だし、世界中からお客さんがやってくる。それに世界遺産の候補なんだろう。苦労なんか何もないでしょ」

「たくさんあるんだよ。富士川はゴミのことで困ったことはない?」

「ゴミはけっこう多いかな。流域の人が拾ってくれたりもするけど、ゴミの方が多くてなかなか減らないんだ。しかも、どんどん量が増えてるし…。しょうがないから雨が降ったとき、量を増やして流しちゃうんだ。海には悪いけど」

「君は上流の山から下流まで動けるからいいな。僕は動けないから、たまったゴミを誰かが片づけてくれるまで、待っていなきゃいけないんだ。土砂崩れを起こしてゴミを流すわけにはいかないし」

「そうだよね。でもそれなら、君の伏流水でゴミを流しちゃえば?あ、でも伏流水は君の内を通ってい

るんだっけ?」

「そうなんだ。僕の内を通る伏流水は、僕がろ過している。飲み水や工業製品の製造にも使われているからね。汚すわけにはいかないんだ」

「そうだよね…。僕の源流は鋸岳からなんだけど、最初はとってもきれいな水なのに、途中でいろいろな汚れた水が合流してきて、駿河湾につくころには、ドロドロの汚い水になってるんだ。最近は特に汚いし…」

「結局、水をバクテリアの働きできれいにしてくれて、太陽があたると蒸発させてくれる海に負担がか

かってしまうんだよね」

「海はそのゴミを処理できないし、大変だね。そういえば、この夏もたくさんの水を蒸発させたみたいで、雨が多く降ってあやうく氾濫しそうになったよ」

「海はマグマとも仲がいいらしいし、僕、噴火しちゃうかも…。まぁ、僕は噴火するとスッキリしていいんだけど、地元の人にめいわくがかかるし」 「君が噴火したら大変だね」

「うん、でもそろそろ人間たちに、僕や君、そして海といった地球の環境全体のことを大切に考えてほしいな。このままだと人間は、いつまでたっても環境のことを真剣に考えてくれないと思うから。噴火することで気づいてほしいな」

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