【特別賞】富士山と富士川
富士山と富士川は仲よしです。富士川は富士山からの雪どけ水が流れてくるので、交流も多いからで
す。もしかしたら、二人とも近くに住んでいるし名前も似ているので、親戚なのかもしれません。
でも、二人は近くにいるにもかかわらず、それぞれの仕事に忙しくて、ふだんは話すこともあまりあり
ませんが、年に一度ぐらいは話をします。
「やあ。富士山、久しぶりだね。今日も登山のお客さんがたくさん来てくれていて、いいなぁ…」
「そうかな。たくさんの人が来てくれるのはとてもうれしいけれど、大変なこともあるんだよ」
「そんなことないでしょう。君は日本で一番高い山だし、世界中からお客さんがやってくる。それに世界遺産の候補なんだろう。苦労なんか何もないでしょ」
「たくさんあるんだよ。富士川はゴミのことで困ったことはない?」
「ゴミはけっこう多いかな。流域の人が拾ってくれたりもするけど、ゴミの方が多くてなかなか減らないんだ。しかも、どんどん量が増えてるし…。しょうがないから雨が降ったとき、量を増やして流しちゃうんだ。海には悪いけど」
「君は上流の山から下流まで動けるからいいな。僕は動けないから、たまったゴミを誰かが片づけてくれるまで、待っていなきゃいけないんだ。土砂崩れを起こしてゴミを流すわけにはいかないし」
「そうだよね。でもそれなら、君の伏流水でゴミを流しちゃえば?あ、でも伏流水は君の内を通ってい
るんだっけ?」
「そうなんだ。僕の内を通る伏流水は、僕がろ過している。飲み水や工業製品の製造にも使われているからね。汚すわけにはいかないんだ」
「そうだよね…。僕の源流は鋸岳からなんだけど、最初はとってもきれいな水なのに、途中でいろいろな汚れた水が合流してきて、駿河湾につくころには、ドロドロの汚い水になってるんだ。最近は特に汚いし…」
「結局、水をバクテリアの働きできれいにしてくれて、太陽があたると蒸発させてくれる海に負担がか
かってしまうんだよね」
「海はそのゴミを処理できないし、大変だね。そういえば、この夏もたくさんの水を蒸発させたみたいで、雨が多く降ってあやうく氾濫しそうになったよ」
「海はマグマとも仲がいいらしいし、僕、噴火しちゃうかも…。まぁ、僕は噴火するとスッキリしていいんだけど、地元の人にめいわくがかかるし」 「君が噴火したら大変だね」
「うん、でもそろそろ人間たちに、僕や君、そして海といった地球の環境全体のことを大切に考えてほしいな。このままだと人間は、いつまでたっても環境のことを真剣に考えてくれないと思うから。噴火することで気づいてほしいな」


