2008年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  北村 紗希

【特別賞】金魚と私

 

今から七年程前まで、私の祖母の家に一つの水槽が置いてあった。その中には、三匹の金魚が入ってい

た。それを初めて見た日…それが、私が初めて「金魚」を知った日だ。

 

真っ赤で小さくて、キラキラ光るモノが三つ、透明な箱の中をくるくる泳いでいる。なんだろ、これ。

 

そう思いながら水槽の中を覗いていると、祖母は私にこんな事を話した。

「小さいけど、みんな生きてるんだよ。何でみんな生きてると思う?水があるからなんだよ」

 

私はそれを聞いて泣いた。祖母の優しく温かい言葉は、幼い私の眼に涙を湛えさせた。それから私は、

水槽の前に座り込んで、ずっと泣いていた。七年も前の話だが、あの夏の日の事は鮮明に覚えている。

 

それから私は、祖母の家に行く度に、ずっと水槽の中の小さな小さな命たちを眺めていた。水槽は窓

際に置かれていて、陽の光が差し込むと、金魚の鱗に反射してとても綺麗だった。その光景は、私の中できっと永遠だ。

 

水の中で儚く揺れる金魚。水が無ければ、生きていけない金魚。水といっても、ただの水ではなく、決

まった水の中でしか生きていけない金魚。尊く、小さき宝物。あの夏の日、金魚が私に教えてくれた事。

 

どんなに小さくたって、水があれば死ぬ事なんて無い。そして、小さなものを大切に想う心。それを持

ち続ければ、すべての生き物は共に支え合えるだろう。

 

あの日から二年くらい経って、金魚は祖母の家の近くの土に埋められた。きっと金魚達は、あの空を優

雅に泳いでいるだろう。

赤いビー玉を見たらあの日を思い出す。そして忘れない。金魚が教えてくれた事を、心に持ち続けるために。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です