【特別賞】金魚と私
2022年8月25日
今から七年程前まで、私の祖母の家に一つの水槽が置いてあった。その中には、三匹の金魚が入ってい
た。それを初めて見た日…それが、私が初めて「金魚」を知った日だ。
真っ赤で小さくて、キラキラ光るモノが三つ、透明な箱の中をくるくる泳いでいる。なんだろ、これ。
そう思いながら水槽の中を覗いていると、祖母は私にこんな事を話した。
「小さいけど、みんな生きてるんだよ。何でみんな生きてると思う?水があるからなんだよ」
私はそれを聞いて泣いた。祖母の優しく温かい言葉は、幼い私の眼に涙を湛えさせた。それから私は、
水槽の前に座り込んで、ずっと泣いていた。七年も前の話だが、あの夏の日の事は鮮明に覚えている。
それから私は、祖母の家に行く度に、ずっと水槽の中の小さな小さな命たちを眺めていた。水槽は窓
際に置かれていて、陽の光が差し込むと、金魚の鱗に反射してとても綺麗だった。その光景は、私の中できっと永遠だ。
水の中で儚く揺れる金魚。水が無ければ、生きていけない金魚。水といっても、ただの水ではなく、決
まった水の中でしか生きていけない金魚。尊く、小さき宝物。あの夏の日、金魚が私に教えてくれた事。
どんなに小さくたって、水があれば死ぬ事なんて無い。そして、小さなものを大切に想う心。それを持
ち続ければ、すべての生き物は共に支え合えるだろう。
あの日から二年くらい経って、金魚は祖母の家の近くの土に埋められた。きっと金魚達は、あの空を優
雅に泳いでいるだろう。
赤いビー玉を見たらあの日を思い出す。そして忘れない。金魚が教えてくれた事を、心に持ち続けるために。


