2009年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  北村 紗希

【特別賞】ホタルたちの夏

ホタルのミドリは今年生まれたホタルです。はじめて光って外に出たとき、川のまわりには人間がいっ

ぱいいました。

ミドリは物知りのナナに、なんで人間がいっぱいいるのか聞きました。ナナは葉っぱでできている本を

ミドリに見せました。

「この本はわたし達のおじいさんやおばあさん達が、この川のホタルの数や水について記録したものだ

よ」

とナナが言って、ミドリに本をわたしました。そして、ミドリのひいおじいさんにあたるところを読み

始めたとき、驚きました。そこにはこう書いてあったのです。 「人間たちが川を汚し、わたし達の仲間は減り、とても苦しい」

と。おじいさん達のところは、

「人間たちが川辺のごみを拾ったりして、前よりは環境がよい」

と書いてありました。ミドリは本を閉じ、今の川を見てみました。水は透き通っています。でも、昔こ

の川が汚れていたと思うとゾッとしました。ナナがミドリに話しかけました。

「人間たちはね、ホタルの数が減ってきて、ホタルを珍しく思うようになって、それから川をきれいにしはじめたんだと思うよ」

それから何日も何日も過ぎたころ、ミドリとナナは葉っぱで作った本に、今年の記録を書いた新しい

葉っぱをつけました。そろそろ夏の終わりが近づいてきたのです。そこには、

「今年の川の水は透き通って、とても気持ちが良かった」 と書き、本をもとの場所にもどしました。

ミドリとナナはそれからあまり会わなくなりました。二人とも大人になって、卵子をつくっていていそ

がしかったのです。ミドリは卵子を産みつける時、こう言いました。

「来年もいっぱい光って、人間たちに見てもらって川を汚さないようにするんだよ」

こうして、今年のホタル達の一生が終わりました。

一年後、ホタル達が葉っぱでできた本を見つけて、またいつもと変わらない一年がやってきました。

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