2012年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  蓬田 やすひろ

【ざぶん大賞】うちぬきの街を支える父

 

僕の住む西条市は水で有名で、そのほとんどが「うちぬき」と呼ばれる水だ。地面の下を

流れている水源からあふれてくる水は、とても冷たくておいしい。

 

父は、そんな「水」の町で「水源開発」という仕事をしている。主にしているのは、家や

田んぼなどの「うちぬき工事」だ。うちぬき工事とは、鉄パイプの先端を加工して根元に孔

を開けたものを、コンプレッサーという機械を使って地下の水層まで打ち込み、地下水を確

保する工事だ。昔は人の力で鉄棒を地面に打ち込み、その中へくり抜いた竹を入れ、自噴す

る地下水を確保したらしい。

 

僕は職場体験学習で、父の仕事を手伝うことにした。てきぱきと準備する父の横で、僕が

「何か手伝うことはある?」と聞くと、

「ねじをつけたり、鉄パイプを運んだりするのを手伝って」と言った。

その間も、父は休む暇なく、機械を動かしたりパイプの位置を調整したりしていた。

 

さあ、いよいようちぬき工事だ。話には聞いていたが、実際に見るのは初めてだ。まず、

直径五センチメートル、長さ三メートルくらいの鉄パイプを打ち込む。地下に流れている水

に届くまで打ち込むのだが、今日は四本打ち込む予定だという。カンカンと高い音を響かせ

ながら、ゆっくりゆっくりパイプが土の中に入っていく。かなり遅い。途中で地盤が固かっ

たのか、パイプが入らなくなった。父は大きい機械に代えて、またパイプの打ち込みをはじ

めた。今度はスムーズに動いた。こんな作業を一時間ほど続けた後、父はパイプの中に小石

を入れ、耳を当てた。地下で水の音がしたらしい。

「これだったら、水が出るやろう」と父は言って、次の作業に移った。

 

次は、パイプの中に直径二センチメートルほどの長いホースをいれ、中の掃除をする作業

だ。やっと僕の出番。ホースを入れたり抜いたりする父の横で、機械を操作してホースの中

に空気を送り、パイプの中の砂や土を掃除した。空気の圧力で土ぼこりや水が上がってくる。

最初に出てきたのは泥水だった。

「触っていい?」と聞くと、父はうなずいた。

手に砂がたくさんのったが、水はとても冷たかった。しばらくすると水がどんどんきれいに

なっていった。三十分くらいたって、もう一度触ってみた。小さい砂はあったが、水道に仕え

る水になったらしい。父は

「もうきれいになったけん、空気をとめてええぞ」と言った。 僕は空気を止め、父はパイプからホースを引き出した。

「場所によってパイプの本数や深さが変わるし、地盤の堅さによってパイプの太さも変わる

んぞ」

作業の合間、父は「うちぬき」についてたくさん語ってくれた。少し自慢げだった。たくさ

んの建物や田んぼなどのうちぬき工事をしてきた父は、隣の市や街の水の出る場所を全てわ

かっているそうだ。最後に、

「少しは水についてわかったのう」と父は言った。

 

水は大切だ。そんなことは十分わかっている。西条市は水が豊かだからこそ、僕たちにとっ

ても住みやすい街になっている。だけど、その街を支えているのは、父のような水の専門家

だ。父はこれからもいろんなところでうちぬき工事をするだろう。ぼくはそんな父がちょっ

ぴり誇らしい。

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