2010年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  梅村 万里子

【ざぶん文化賞】べんちょこ

ぼくは、二ッ川に住む「べんちょこ」。ニッポンバラタナゴやセボシタビラ、ぼくらタナ

ゴの仲間のことをみんな、「べんちょこ」って呼ぶんだ。かわいい呼び名でしょ。ぼくの住ま

いの二ッ川は、沖端川が水源の清流で、水郷柳川を支える重要な河川なんだ。近くには小学

校があって、橋の上を子供たちがにぎやかに通っていくよ。まわりは田んぼが広がっていて、

春には菜の花が咲いてとってもきれいだよ。ぼくはチビで身長六センチ。大きいやつは九セ

ンチのがいるよ。それに、頭も口も小さくて丸っこい口、一対の口ひげもある。かっこいいで

しょ。雑食性で何でも食べるんだ。ぼくらタナゴの数は、絶滅が心配されるぐらい希少な魚

なんだ。

ぼくたちは変わった繁殖習性をもってるんだ。だってドブガイみたいな、生きた淡水二枚

貝のエラの中に卵を産みつけるんだから。どうやってエラの中に産みつけるかって?それ

は、貝の水がでてくる出水孔をのぞきこんで、うまくねらいを定めて産みつけるのさ。だか

ら、ぼくたちが住むところには、卵を産みつける貝がいないといけない。その二枚貝が生息

するには、エサになる植物プランクトンのケイソウ類が豊富で、溶存酸素量が十分ある水質、

砂泥底から泥底の底質が必要なんだ。しかもドブガイ類は、幼生期にヨシノボリ属などの底

生魚のひれに寄生し、成長する。だから、ドブガイの繁殖には、これら底生魚の存在が不可

欠…。といった具合に、ぼくたち「べんちょこ」の住まいの条件は大変なんだ。しかも、最

近は、今までいなかった外来魚まで住みついちゃったり。

ぼくたち平野部の川に住む淡水魚は、人間の影響を受ける環境のもとで、種々の生物と巧

妙に関わり合って命をつないでいる。これからも、仲間といっしょにずっと二ッ川に住みた

いな。

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