【ざぶん大賞】僕とお父さんと姿川の鯉
「ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ」
朝の四時、目覚ましが鳴る。僕は飛び起きる。今日は、僕が楽しみにしている、週に一度
のお父さんとの鯉釣りの日だ。学校の日は、朝お母さんに起こされても、なかなか起きない
けれど、この日だけは、家族で一番の早起きをする。昨日の夜に用意しておいた、つり道具
を車に乗せて、お父さんと出発。僕は車の中で、どうか水門が閉まっていますように…と願
う。水門は五月から十月まではたいてい閉まっているが、時々、天候などで水門を開けてし
まうことがあるのだ。車に乗って十分。姿川に着く。僕はそっと耳をすませる。川の流れの
音を聞いてみる。
「お父さん、水門閉まってる?」
「大丈夫だ。閉まってるぞ。今までの最高は七十三センチだ。今日はそれ以上の鯉が釣れる
といいな」
僕はワクワクしながら、えさを作り始める。僕のねった、みその巨大おにぎりのようなえ
さを針につけ、願いを込めてさおを投げる。スルスルスルボチャン。僕の思い通りのポイン
トにえさが落ちた。ここからは、釣れた合図の鈴がいつ鳴るかはわからない。今まで、五時
間で一匹も釣れなかったこともある。僕はじっと、鈴が鳴るのを待つ。だんだんあたりが明
るくなってきた。
「あっ、お父さん、今、鯉がジャンプしたよ」 「おう、今日はでかいのが釣れそうだぞ」
その時、リンリンリン、リンリンリン、お父さんの鈴が大きな音で鳴りひびいている。
「祐太、あげてみろ」
僕はゆっくり、リールをまき始める。 「お父さん、すごいひき。きっと大きいよ」
糸が切れないよう、魚があばれないように、僕はさおをあやつる。僕とお父さんは、何が
つれたのか、どれくらい大きいのか、ワクワクしながら、さおをひきあげる。
「えいっ。あれ〜?お父さん」 「あっははは。ナマズだ、ナマズ」
釣れたのは五十センチもあるナマズだった。ぼくとお父さんは、顔を見合わせて、笑いが
止まらなかった。他にも赤い色をしたフナや、小さいメダカ、時々はヘビが泳いでいる。カ
モも親子で水面を泳いでいる。自然ってすばらしい。僕は、この川がいつまでもきれいで、
たくさんの生き物が育つように願う。
二時間後、僕の鈴も鳴った。釣れたのはおなかにたくさんたまごを持っている、メスのお
母さん鯉だった。僕は、お母さん鯉をきずつけないように、そっと口から針をとってにがし
てあげた。
「この姿川にいつまでもたくさんの鯉が泳いでいるように、がんばって元気な赤ちゃんを産
んでね」
新しい命がめばえ、大きく成長した君達に会いに、毎年姿川に行くよ。


