2010年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  林 香君

【ざぶん文化賞】ひとしずくの水

車からおりると、太陽がギラギラと暑く光っていた。空気がもぁーっと暑くて、サウナみ

たいに、わたしの体からあせがダラダラと流れてきた。あんまりに暑いので、かげを探して

試合がよく見える場所まで歩いた。

今日は、お父さんやお母さんといっしょにお兄ちゃんのサッカーのおうえんに来た。本当

は暑いから、家にいたかったけど、しぶしぶついて来た。

お兄ちゃんたちが、ボールを追って走るたびに、もくもくと砂ぼこりがまい上がった。さ

らに、わたしがすわっている木の上では、たくさんのセミたちが、 「ミーン、ミーン、ミーン」

「ジー、ジー、ジー、ジー」

と大きな声で鳴いていて、日かげにいるのに暑く感じて、あせがぽたぽたとたれてきた。

来てまだ間もないのに、わたしののどはカラカラになっていた。 「お母さん、わたしの水とうを取って」

と言い、水とうを取ってもらうと、すぐにわたしはゴクゴクと冷たいむぎ茶を飲み始めた。

するとお母さんから、

「そんなに急いで飲むと、すぐにお茶がなくなってしまうよ」

と注意をされた。でも、とてものどがかわいていたので、お母さんの言うことを聞かない

で、ゴクゴクとさらに飲みつづけた。

しばらくすると、やっぱりお母さんの言ったとおりにお茶はなくなってしまった。水とう

は、カランカランと氷の音しかしなくなった。すると、 「だから言ったでしょ」

とお母さんがわたしをチラッと見て言った。くやしかったけどその通りだったので、わた

しは試合がおわるまでがまんしようと思った。でも、 「ミーン、ミーン、ミーン」

「ジー、ジー、ジー、ジー」

と、さっきよりも大きな声で鳴くセミたちのせいで、がまんできなくなった。

わたしは、水とうのふたを開けると、さかさにして口の中にあけた。すると、氷がとけて

ひんやりした水のしずくが、カラカラのわたしののどに落ちた。

なんだか、むぎ茶よりもひとしずくの水の方がおいしく感じた。それがすごくふしぎだった。

このあと、氷も口の中へほうりこんで食べたら、アイスクリームよりもとてもおいしかった。

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