【ざぶん文化賞】ひとしずくの水
車からおりると、太陽がギラギラと暑く光っていた。空気がもぁーっと暑くて、サウナみ
たいに、わたしの体からあせがダラダラと流れてきた。あんまりに暑いので、かげを探して
試合がよく見える場所まで歩いた。
今日は、お父さんやお母さんといっしょにお兄ちゃんのサッカーのおうえんに来た。本当
は暑いから、家にいたかったけど、しぶしぶついて来た。
お兄ちゃんたちが、ボールを追って走るたびに、もくもくと砂ぼこりがまい上がった。さ
らに、わたしがすわっている木の上では、たくさんのセミたちが、 「ミーン、ミーン、ミーン」
「ジー、ジー、ジー、ジー」
と大きな声で鳴いていて、日かげにいるのに暑く感じて、あせがぽたぽたとたれてきた。
来てまだ間もないのに、わたしののどはカラカラになっていた。 「お母さん、わたしの水とうを取って」
と言い、水とうを取ってもらうと、すぐにわたしはゴクゴクと冷たいむぎ茶を飲み始めた。
するとお母さんから、
「そんなに急いで飲むと、すぐにお茶がなくなってしまうよ」
と注意をされた。でも、とてものどがかわいていたので、お母さんの言うことを聞かない
で、ゴクゴクとさらに飲みつづけた。
しばらくすると、やっぱりお母さんの言ったとおりにお茶はなくなってしまった。水とう
は、カランカランと氷の音しかしなくなった。すると、 「だから言ったでしょ」
とお母さんがわたしをチラッと見て言った。くやしかったけどその通りだったので、わた
しは試合がおわるまでがまんしようと思った。でも、 「ミーン、ミーン、ミーン」
「ジー、ジー、ジー、ジー」
と、さっきよりも大きな声で鳴くセミたちのせいで、がまんできなくなった。
わたしは、水とうのふたを開けると、さかさにして口の中にあけた。すると、氷がとけて
ひんやりした水のしずくが、カラカラのわたしののどに落ちた。
なんだか、むぎ茶よりもひとしずくの水の方がおいしく感じた。それがすごくふしぎだった。
このあと、氷も口の中へほうりこんで食べたら、アイスクリームよりもとてもおいしかった。


