2012年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  殿村 栄一

【ざぶん文化賞】雷様の三四郎

 

この青い空には雲がありますが、その上には、科学では説明のつかない者達がいます。そ

うです。あの、いわずとしれた『雷様』です。この者達は人間のように組織をつくっていま

す。その中では、お上のお偉いさんの言うことを聞きながら、世界中に雨を降らしている者

達がほとんどです。その中にものすごく心の優しい雷様、『三四郎』がいました。

 

今日も、三四郎は出勤を命じられました。日本の九州あたりに大雨を七日間にわたって降

らせろ、と言うものでした。ここで心の優しい三四郎は悩みました。そんなことをしては、洪

水が起こってたくさんの人が死んでしまうかもしれません。しかし命令は命令。お上には逆

らえません。三四郎は命令通りに、しぶしぶ雨をふらせ始めました。しかし、一日、二日とた

つにつれ、人間たちが、ものすごい雨、観測史上最高、とさわぎはじめました。そして三日

目には、人々が死んでしまうまでになりました。心の優しい三四郎は、これを見ていられず、

七日間のところを勝手に三日に縮め、帰ってしまいました。

 

帰ると三四郎はお上にこっぴどく叱られました。

「お前が勝手なことをやったから、降らせなかった分だけ今年の梅雨は、長びかせなきゃい

けない。それに死ぬ予定だったモノがお前のせいで死ななかったから、死神からも苦情がは

いっているんだ」と叱られ、怒鳴られました。しかし三四郎はふだんから真面目だったので

クビにはならずにすみました。

 

またある日、三四郎は命令をうけました。今回はアフリカでの仕事でした。雷様は最初に

書いたように世界中で仕事をしているのです。そして仕事の内容は、アフリカの砂漠あたり

に、もうし訳程度の雨をふらせる、というものでした。しかしそのあたりは、日でりに悩ま

され、このままでは農作物が育たず、大量の死人が出るのではないかといわれていたところ

でした。ここでも心の優しい三四郎はそういうことに目をつぶれず、つい、雨を多く降らせ

てしまいました。

 

それで三四郎は二度目なり、ということでお上の怒りにふれました。しかしここでも三四

郎は、常に真面目だというので叱られるだけで済みました。

 

しかし、次の仕事は雷様の中では名誉な、台風の仕事でした。お上が三四郎の名誉を回復

させようと、わざと大仕事をふっかけたのです。三四郎は悩みました。今回の台風は、お上

の差し金で超大型、だったのです。こんなものが日本に上陸したら大変だぞ、と三四郎は思

い、すぐに台風のルートを見ました。なんと日本に直撃のルートでは、ありませんか。

 

仕事の日、やはり三四郎は、やらかしました。台風をいきなり消滅させてしまったのです。

これにはお上も怒り狂い、ついに三四郎はクビをいいわたされました。雷様にとってクビに

なるとは死ぬということです。地上に追放されてしまいます。雷様は雲の上でしか、生きら

れないのです。

 

追放の日、三四郎は地上におとされるまぎわにこう言いました。

「人間たちのためにやったのだから、これで悔いはない」

そうして、三四郎は地上におとされました。そのとき、三四郎は一つの、きれいで美しく、

すばらしい虹になった、ということです。

 いまでも「三四郎こそ本物の雷様だった」と懐しむ者も多いそうです。

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