【特別賞】弟と濡れグマ
八月の中頃、夕立ちが降りました。私の家は構造上、窓を開けていると、弟の部屋に雨が降りそそいで
しまいます。その窓の辺りに昔から使っていたクマの人形がありました。どれくらい昔からというと、私の姉が小学生の頃の誕生日にもらったものです。このクマは姉の世代から私、弟と継がれたものでした。
今は弟のものですが、あまり興味はなかったそうです。そのクマは夕立ちのおかげでびしょびしょに濡れていました。
さらに、この人形の大きさの関係で、水で丸洗いということがなく、クマの首にあるリボンが脱色して
しまいました。そして、そのリボンが赤い色をしていたため、首から血を流しているようになってしまいました。このクマが恐しかったのか、弟はより近付くことがなくなりました。
母がクマをコインランドリーで洗ってきて、乾かすだけとなりました。日の当り具合から、まずは庭の
自転車のかごに入れていましたが、通行者に気味悪がられ、撤収。ベランダ前に置いて乾かす。フローリングにしみが出来、撤収。ついに弟のベランダに来ました。弟は始めは抵抗していましたが、あきらめがついたのか、おとなしくなりました。
さて、クマをベランダに吊った日の夕方、また夕立が降りました。これが以前よりも長くつづき、朝に
止んだ所、弟が絶叫していました。まあ、クマが首で吊られていて、その上、首から血を流しているのですから。私もちょっと恐怖を覚えました。
さらに、運が悪いのか、毎日夕立続きとなり、もうびしょ濡れになり、我家でついた名が「濡れグマ」
となりました。この愛称で愛着がわいたのか、毎日「濡れグマまだ乾かんの?」と声をかけてくるようになりました。部屋で一人で寝るほど恐怖は消えてないらしく、まだ母と一緒に寝ています。
「濡れグマ」は、まだ弟のベランダに吊ってあります。


