2011年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  青山 恵

【特別賞】思いやりの贈りもの

 

さばくに一匹のオオカミがいました。彼は一人ぼっちでした。おなかが減っていて、のどもかわいてお

り、さばくをさまよっていました。

 

彼は以前、同じオオカミの仲間と共に暮らしていました。一緒に遊んで、狩りをして、ごはんも食べて

いました。でも、彼はとっても食いしんぼうで、友だちのごはんや水を全部取ってしまうのです。彼のせ いでみんなおなかがペコペコになり、いつしか彼を嫌うようになりました。それでも彼はやめなかったの で、他の動物達もいなくなってしまいました。食べものは、もう何もありません。

 

それを空から見ていた神様がいました。神様は、みんなに迷惑をかけるオオカミが許せなくて、彼らが

住む所へ降りて行きました。

「この群れの中に、お前がいてはなりません。今すぐに出て行きなさい」

 

そう言うと、神様はくいしんぼうのオオカミを追い出してしまいました。そしてそのオオカミは、広い

さばくの真ん中に一人きりになってしまったのです。

 

さばくでの食べものは、ちいさなはっぱや虫だけ。他には何もありません。彼はどんどんやせていきま

した。時々、彼は仲間達が恋しくなって、遠吠えをしました。でもその声に答える者はいません。聞こえ てくるのは、「水が飲みたいよう。おなかがすいたよう」という仲間達の声だけです。みんなが自分のせ いで苦しんでいると知って、彼の心はズキズキと痛みました。彼は反省して、ごめんね、ごめんね、と何 度もつぶやきました。ある日、彼がよたよたと力なく歩いていると、遠くに人間の影が見えました。人間は、オオカミを見つけて向かってきます。きっと毛皮をとりにやってきたのです。彼は残っていた最後の力をふりしぼって、 後ろも見ずに走りました。力尽きるまで走り続けました。ふり返ると、狩人はもう、いませんでした。で も、彼の体はボロボロです。

 

彼はその場に座りこむと、空を見あげました。青い空も、白い雲も、まぶしい太陽も、みんなが彼を見

て笑っていました。みんなが彼を嫌っていました。とたんにたまらなくなって、とうとう彼は泣きだしま した。大粒の涙は、いくら流しても止まりません。彼は空に向ってオイオイと泣き続けました。

 

彼を群れから追い出した神様は、その姿を見ていました。しっかりと反省している彼を見ると神様は、

また彼の元へと降りて行きました。

「お前が今、一番に望むことは何ですか?」

神様がそう尋ねると、彼は顔をあげて、

「昔みたいに、仲間と一緒に暮らしたい」

と答え、また泣きだしました。

「仲間達も、お前のせいでうえています。今までたくさん助けられたでしょう?だから今度はお前が助

 

ける番です。みんなをここに呼びなさい。前よりもっと幸せな生活が送れると」

神様はにっこりと笑って、大粒の涙を雨に変えてやりました。たちまち辺りは土砂降りになり、地面から は草木が生え、動物達が集まってきました。

 

オオカミは心地よい雨空に向かって、大きく遠吠えをしました。

「水だ。みんな、水があるぞ」

その高らかな声は、森中に響き渡りました。

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