2011年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  荒木 崇

【特別賞】川でできた友達

 「ねぇ、一緒に遊んでもいい?」

その声は、川のせせらぎと共にその場に響いた。

 

毎年、夏休みと冬休みに私はおばあちゃんの家に行く。何にもないような所だったけど、家の近くには

流れの穏やかな川があって、夏休みには毎日そこに通っていた。

 

朝ごはんを急いで食べて川へと向う。家の裏の林をぬければ到着するそこは、少し川が深くなっていて、まるで小さなプールだった。ここで他の人を見たことがないから、ここは私の貸し切りプールなんだーと おばあちゃんに言ったことがあった気がするけど、小さい時だったのか全然思い出せなかった。

 

五分もかからず到着した川は、やっぱり昨年と変わらずに私を迎えてくれ、一年ぶりに触れた川の水

は冷たくてとても気持ちよかった。さっそく水着に着がえ、水に入ろうとした時、うしろから小さな声が 聞こえた。だれかが来るなんて考えていなかった私は、びくっとはね上がってからうしろを見た。

 

そこには、私と同じ小学校高学年であろう女の子が私を見つめていた。

「一緒に遊んでいい、かな?」

 

私がなんの返事もしなかったからか、彼女はもう一度、私に問いかけてきた。もちろん断る理由なんて

ないし、一人はおもしろくないから「もちろん」と言って手招きをした。

 

私の名前を教えたら、彼女はニコリと笑って、

「私はミスズっていうの。漢字はねぇ、美しい鈴って書くんだ」

と、教えてくれた。美鈴ちゃんか、かわいい名前だな。

 

その後は二人で遊んだ。浅い所で小さいダムを作ったり、ふとももあたりまでの水かさの所で小魚を観

察したり、そして今は水から上がって、石をどれだけ高く積めるか挑戦している。一人でいる時と同じ遊 びだったけど、なんだかいつも以上に楽しかった。美鈴ちゃんのおかげだ。もっと高く!と頑張って石を つんでいる私に、美鈴ちゃんはぎりぎり聞こえるくらいの大きさの声で呟いた。

「私ね、いつも一人なんだ。誰も私に気付いてくれないの。だから、今日一緒に遊べてすっごく嬉しい」

 

美鈴ちゃんは幸せそうにほほ笑んだが、私にはわからないことが一つ、頭を巡った。

「ねえ、誰も気付かないって、どういうこと?」

ぱっと美鈴ちゃんは悲しそうな顔になった。

「みんな、私に気付かないの。みんな、私を〝ただあるもの〞にしようとするんだ。私は〝あって当たり 前なもの〞なんだって」

彼女は言葉を続けた。

「私だって、いつかは無くなっちゃうだろうし、汚されたら悲しい。もちろん大事に使ってくれたらすご く嬉しい」

 

彼女が何を伝えたいかは理解できなかったが、気持ちは分かるような気がした。ふと回りを見渡すと、

以前までは全くなかったポイ捨てのゴミが目の端に映った。

 

私の視界から彼女は消えたが、話はまだ続いていた。

「ここに来る人はみんな自分勝手。でも、あなたは違う気がする」 後ろから、スウッと息を吸う音が聴こえ、そして、

「ここを、守ってちょうだい」

ばっと彼女がいた方へ振り返る。そこにはさっきまで私が頑張って積んでいた石があるだけだった。あれ、 一段高くなっている。

「お昼ご飯よー。帰ってらっしゃい」

お母さんの声がした。近くに転がっていた空カンを持って走りだすと、

「ありがとう」

と、聞こえた。こっちこそありがとう、美鈴ちゃん。

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