2015年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  寺坂 ひとみ

【特別賞】海比べ

海を見たのは二つめだった。学校の海洋学習で行った大阪府泉南郡岬町の海。

筏の上からみた海は、深いところはやっぱり緑色だった。深ければ深いほど濃くなっていた。黒に近

かった。それは松山の海と同じ。太陽の光がまぶしくて、キラキラして光が飛び跳ねているのも同じ。

触ると冷たい。なめるとしょっぱい。こんな味なんだ。お料理には使えないな。私の知っている松山の

海とは、波打ち際から浜辺のまだ波にぬれていないところまでの砂のかたさの移り変わりや、砂の粒の

大きさや滑らかさや粗さもちがった。ちがうんだとは知らなかった。流れてくる貝や海草もちがう。砂

に金のかけらのような波の跡がつかなくて、ちょっとつまらない。海がちがうと浜辺もちがうのかもし

れない。

朝、散歩をしているとヤシの実が流れ着いていたり、月夜の晩にボタンが一つ落ちているような浜辺

は、どんな浜辺なんだろう。つらいことがあった時に来て、カニと遊ぶような浜辺からは、どんな海が

見えるのかな。

今までは、浜辺同士で比べたことがなかったから、松山の海と言ってもすぐにイメージが浮かばな

かったが、比べてみると、絵に描けるくらい浮かぶ。夕日が似合いそうなのは春の松山の海。桜も似合

う。そして、静かでおだやかでやわらかな感じ。渡し船のおじさんとおしゃべりしながら水面をみるの

もすごく好きだ。大阪の海はちがった。海ってちがうんだと思った。夏だったから、声がいっぱいあふ

れていて、フナムシがうじゃうじゃいて、海に来て初めて「気持ち悪い」と思った。魚や貝だけじゃな

い、いろんな生き物が生きている。クラゲだっていた。気がつかなかったけれど、松山の海にも、夏に

なったらクラゲがいるのかな。フナ虫もいるのかな。

お母さんが子供のころは、そこは梅津寺という海水浴場だったと教えてもらった。私がお母さんに

なっても松山の海に私の子供を連れて行ったときに、いろんな生き物をみたり、貝を拾ったり、景色を

みて、優しい気持ちになれたりできたらいいな、と思う。だから、この発見をまず、大事に覚えておこ

うと思う。そして、いろんな海辺に行くたびに思い出したり、新しく付け加えたりしよう。楽しみだ。

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