2010年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  羽場 文彦

【ざぶん文化賞】宇根さんと僕の約束

初めて訪れた広島。

平和祈念式典が始まり、僕はただ、暑くて暑くて汗でびっしょり…。

「水、水がもっと飲みたい」と心で叫ぶ。

その後、五十年以上も原爆献水を続けてきた、宇根利枝さんと噴水前で出会った。献水用

の水を分けて飲ませてもらった時は、言葉にできないほどうれしかった。 「おお…そんなに美味しかったか」

宇根さんに案内され、己斐の山の滝へと向かった。ここにも、冷たくて美味しい水があっ

たではないかそれは宇根さんが毎朝汲みにくる、献水の水だった。

宇根さんが、兵器工場の託児所で保母さんをしていた頃の事を語ってくれた。ドカンという大きな音とともにすべてが吹き飛び、傷だらけになりながら必死に子供達をさがして外に出ると、まるで地獄。顔がぱんぱんにふくれ、毛がさかだった人達に手をつかまれ、「水、水をください…」と拝まれたこと。毒の水をあげるわけにはいかず、心を鬼にしてあやまったこと。そして、あの時水をあげられず、「すまない、申し訳ない」という思いが、今も献水を続けさせていること。

平和祈念式典の間、立っているだけでも暑くて水が欲しかった僕なのに、原爆があった日

は、大勢の人達が熱くて痛くて、一滴の水も飲めずに苦しんでいたのだ。

また、水だけでなく、食べ物まで少なかったという時代。楽しみにしていた弁当箱を抱え

たまま、原爆に焼かれて亡くなった中学一年生の少年。資料館で目にした時は、胸の中がと

ても熱くなった。

それなのに、僕たちはどうだろう…。のどがかわいたらすぐに水が飲め、腹が減ったら好

きな物がたくさん食べられる。本当に本当に、感謝しなあかん…。 翌日、僕はいろいろな事を思いながら、こどもの像に献水をした。

「今日は、冷たい美味しい水を持ってきました。今度こそ、戦争のない平和な時代に生まれ

てきて、この広島で、命の続きを精一杯してください」と願いながら…。

 

最後に、滝の観音での、宇根さんと僕の約束

核が廃絶されても、

戦争が終わっても、人々同士が平和でなければ、平和ではない。

自分を生んでくれた

父に感謝をし、

母に感謝をし、

これからの平和をつくっていってくださいね。

 

僕はこの言葉を忘れずに、これからも家族との平和、世界の平和をつくっていきたい。

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