2014年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  柳 武志

【ざぶん環境賞】海を好きになる

私の祖父母の家は、岩手県山田町にある。私は、夏には必ず海に行って遊んでいた。浮 き輪をつけて泳いだり、貝殻を拾ったりして、楽しく遊んだ思い出がたくさん残っている。 小さい頃の私は海が大好きだった。

二〇十一年三月十一日、東日本大震災が起こった。あの出来事は、大きな津波の恐ろし さを人々の心に焼き付けるものとなった。

震災の二日後、私の家族は岩手を訪れた。震災でゆがんだ道路。通行止めの道。たどり 着くのも大変で、かなり時間がかかった。

いつもの美しい海の風景は、ガラリと変わっていた。流された木材や日用品がたくさん 浮かんでいる。私は唖然とした。

やっと母方の祖父母の家に着くと、あるはずの家がない。場所を間違えてしまったのか と思うほど跡形もなかった。無残な姿になった船やトラック。なぜ、そんなものがそこに あるのか。その光景は想像以上の物だった。花火やバーベキューをして楽しかった思い出の 家はもう戻らないことがはっきりとわかった。

父方の祖父母の家は、何とか無事だった。しかし家の中はめちゃめちゃで、壁には津波 の跡がくっきりと残っていた。

懐かしい楽しい思い出の場所が、大好きな海のために、悲しくて辛い場所になってしまった。私はショックだった。

震災から三年が経ち、岩手の町の様子は明るくなったと思う。ガレキはほとんど片付き 仮設だけれどスーパーもたくさんできた。皆が前を向いて歩こうとしている。心に大きな 傷を持っている人はたくさんいるが、みんな頑張っている。そんな姿に、とても励まされ る。

私達の学校では、震災で被害を受けた宮城県七ヶ浜町に行き、自分たちが今できること をやろうと、ボランティア活動を行っている。三年目の今年は、私達二年生が、国際トラ イアスロン大会が開催される湊浜の清掃活動を行った。

広い浜一面に、ペットボトルや家庭用品などの漂着ごみ、海草や貝殻など様々なゴミが 落ちていた。私を含めてほとんどの人がボランティアの作業をするのは初めての体験だっ たが、みんな頑張ったと思う。少しずつ浜がきれいになり、午後には何とか片付いた。み ちがえるほど美しい浜の向こうに穏やかな海が続いている。この活動で、私達は予想以上 の達成感を感じることができたのだった。

トライアスロン大会も成功のうちに終わったという。真っ青な海を必死で泳ぐ競技者達。 その光景は、平和そのものだった。

海が引き起こした自然災害は、とてもつらく悲しいものだった。海を見るだけで悲しさ がこみ上げてくる人も多いだろう。しかし、私達はこれまでも海と共に生きてきた。たく さんの恵みを受けてきたのだ。海に背を向けるわけにはいかない。災害に対しては備えを忘れず、海に寄り添い、共に生きていきたい。私はもう一度、海を好きになろうと思う。

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