2013年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  立石 尚久

【特別賞】夏の思い出

「ザザザー、ザザザー」

二年前の夏のことです。私は、家族五人でグアム旅行へ行きました。私たちが泊まったホテルは海のす

ぐ近くで、毎日、波の音が聞こえてきました。ホテルの階段を下り、外へ出ると、真っ青な海が広がっていました。私は、間近で海を見て、泳ぎたくてうずうずしました。

早速、水着に着替えて、兄弟三人で海に飛び込みました。私と弟は、海で泳ぐのが初めてで、うれし

くて、日が暮れるまで海につかっていました。

家に帰って、祖父母に初めて海に入ったことを話すと、祖父に、 「おまえ、初めてちゃうぞ」

と言われました。

「えっ、ほんま。いつ海に行ったことがあるん」

と聞くと、祖父は、家族で海に行った時のことを話してくれました。

それは、私が一歳四ヶ月のことだそうです。父と兄は、沖で泳いでいました。祖父は、私を浮き輪につ

かまらせて、兄の所へつれていこうとしました。 その時、祖母と母が、

「まだ小さいから危ないよ。連れていかれん」

と、止めたのに、祖父は、私が喜ぶと思い、沖へ行こうとしたその時です。「ザブーン」と、大きな波

が私を浮き輪ごと飲み込んでいきました。水面には、浮き輪だけが浮かび、家族全員が真っ青になりま 

した。

次の瞬間、祖父の目の前に肌色の棒が浮かび上がり、無我夢中で引っぱり上げたそうです。それは、

まさしく私の足でした。家族全員がホッとしました。私の命の代償に、祖父の眼鏡が、海の中に沈んでいきました。

帰りの車の中、スヤスヤ寝る私の顔を見て、母が、 「海結の命が助かったんだから、眼鏡なんて安いもんじゃよ」

と言ったそうです。私はこんな、恐ろしい体験をしたとは全く知りませんでした。

テレビや新聞で水難事故の記事を目にしますが、まさか、自分がそんな体験をしていたとは、びっく

りしました。水難事故の話は毎年のように耳にします。今年も同じ中学二年生の子が川で命を落としま

した。自然には、楽しい一面と、恐ろしい一面があることを改めて知りました。私は、今年も海に行く予定です。これからも、楽しい思い出だけが増えるように気をつけたいです。

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