【ざぶん環境賞】鬼怒川
もう一年ほど前になる。階段をかけ上がる音の後、部屋の電気がついた。まぶしい、もう
朝なのかと思い、目をこすりながら起きると、お母さんが
「今、防災無線でただちに命を守る行動をして下さい。って放送がなったよ。鬼怒川が危な
いんじゃないかな」 と言った。
急いで下におりて、外に出てみると、雨は小雨になっていたけど、今までに聞いたことの
ないような、ゴーといううなり声のような音が鬼怒川の方からきこえてきた。中に入り時計
を見ると、夜中の二時だった。外は暗く、鬼怒川がどんなふうかわからないのですごく恐ろ
しかった。テレビを付け、ボーっとしていると、お母さんはぼく達の洋服やおかしなどを大
きなかばんにつめはじめた。その後、洋服タンスやアルバムなどを二階に運びはじめた。軽
トラに乗って鬼怒川を見に行ったお父さんが帰ってきた。
「よく見えなかったけど、場所によっては、堤防のすぐ下まできているかもしれない」
と言った。お母さんはあわてて、
「お前達も、学校の用意を二階にあげなさい。そして、自分の大事なものを段ボールに入れ
て二階に運ぶんだよ」
と言って、ぼく達に一箱ずつ段ボールをくれた。ぼくはマンガを入れて二階に運んだ。何
日か前に、魚つりや、川遊びをさせてくれた鬼怒川がこんなに怖いものに変わってしまうな
んて思いもしなかった。毎年、お米を作る用水路に水をくれる鬼怒川、ぼく達の生活に必要
な恵みをくれる鬼怒川が、雨が続いただけでこんなになるとは思わなかった。
朝になり、明るくなると、お母さんは何度も外に出て鬼怒川の方を見た、ぼくも一緒に出
て見た。
「何を見ているの」とぼくがきくと、
「堤防の向こう側に見える木は中洲の木。もしあの木が倒れたらきっとすごいことになるよ」
と、お母さんは答えた。
そして、お昼頃になり、テレビを見ていると、すごいことがおこった。堤防がけっかいし
て、街がこう水になっている様子が写し出された。いろんな物が水につかり押し流された。
助けを待っている人もたくさん写った。いつも楽しく遊んでいる鬼怒川がいろんな物をこわ
していく。
夕方、いろいろ落ちついたので、買い物にお母さんと出かけ、鬼怒川にかかる橋を渡ると、
見たことのないような流れであれくるっている鬼怒川を見た。 「すごいね」
と、二人で言いあった。
僕ははやくいつもの鬼怒川に戻ってくれればいいなと思った。今は近づけないけど、また
遊びたい。
そして、あの街がはやくふっこうしてほしいと思った。


