【特別賞】初めての水害
初めて買ってもらった、アイスの誕生日ケーキは溶けてしまった。これが悲しいことの始まりだった。
三年前の七月十四日の朝、私の家は、正面から川の水が、裏からは用水路の水がおしよせてきて、
あっという間に水びたしになってしまった。玄関のドアは開けることができず、裏庭の窓から脱出した。
水の高さは私のひざ上まであり、自力で歩くことができず、私は母に抱きかかえられた。
避難所に着いた時は、まだ電気が通じていて怖くはなかった。しばらくして水が引いたので家に帰る
と電気はつかず、冷蔵庫の中にあったアイスのケーキは溶けていた。水道をひねるが水は出なかった。
お風呂の残り湯があったのでトイレの水は確保できた。母が、 「飲み水もいるよね」
と自動販売機に行ったが、もうすでに飲み物は売り切れだった。
水道から水が出る、今まであたりまえだと思っていたことが、あたりまえではなくなる生活が、この
日から始まった。
家では食事を作ることもできず、避難所でおにぎりを作ってみんなで食べた。お風呂に入ることはで
きず、電気はつかない。ろうそくの灯りの中で寝た。
道はすん断され、こ立してしまったことを次の日の朝知った。ゲームの充電ができない。テレビも見
ることができない。電気がない生活は困ったが水のない生活は大変だった。山水が出る所まで洗たくを
するために行った。お風呂は市が経営する所に行った。住民のほとんどが利用するので、落ちついて入
ることはできなかった。
道路がうかいできるようになった。遠くから何時間もかけて、困っている私たちの所へ給水車が来て
くれた時は、本当にうれしかった。水の大切さ、ありがたさを改めて感じた。 小さい頃両親から言われていた言葉がある。
「もったいないおばけが出るよ」
じゃ口をひねると水が出る生活は当然のことだった。水がもったいないなんて考えたことはなかった。
だけど、あの夏の体験があって、歯みがきする時は出しっぱなしにしない。シャワーを使う時は、無駄
使いはしないように考える。私の気持ちは変わった。
最近、台風が多く来るようになっている。水の怖さを私は知った。だから、台風などに備える準備を
していこうと思う。そして、いつも水の大切さを考えながら生活していこうと思う。


