2015年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  キクチユウタ

【特別賞】初めての水害

初めて買ってもらった、アイスの誕生日ケーキは溶けてしまった。これが悲しいことの始まりだった。

三年前の七月十四日の朝、私の家は、正面から川の水が、裏からは用水路の水がおしよせてきて、

あっという間に水びたしになってしまった。玄関のドアは開けることができず、裏庭の窓から脱出した。

水の高さは私のひざ上まであり、自力で歩くことができず、私は母に抱きかかえられた。

避難所に着いた時は、まだ電気が通じていて怖くはなかった。しばらくして水が引いたので家に帰る

と電気はつかず、冷蔵庫の中にあったアイスのケーキは溶けていた。水道をひねるが水は出なかった。

お風呂の残り湯があったのでトイレの水は確保できた。母が、 「飲み水もいるよね」

と自動販売機に行ったが、もうすでに飲み物は売り切れだった。

水道から水が出る、今まであたりまえだと思っていたことが、あたりまえではなくなる生活が、この

日から始まった。

家では食事を作ることもできず、避難所でおにぎりを作ってみんなで食べた。お風呂に入ることはで

きず、電気はつかない。ろうそくの灯りの中で寝た。

道はすん断され、こ立してしまったことを次の日の朝知った。ゲームの充電ができない。テレビも見

ることができない。電気がない生活は困ったが水のない生活は大変だった。山水が出る所まで洗たくを

するために行った。お風呂は市が経営する所に行った。住民のほとんどが利用するので、落ちついて入

ることはできなかった。

道路がうかいできるようになった。遠くから何時間もかけて、困っている私たちの所へ給水車が来て

くれた時は、本当にうれしかった。水の大切さ、ありがたさを改めて感じた。 小さい頃両親から言われていた言葉がある。

「もったいないおばけが出るよ」

じゃ口をひねると水が出る生活は当然のことだった。水がもったいないなんて考えたことはなかった。

だけど、あの夏の体験があって、歯みがきする時は出しっぱなしにしない。シャワーを使う時は、無駄

使いはしないように考える。私の気持ちは変わった。

最近、台風が多く来るようになっている。水の怖さを私は知った。だから、台風などに備える準備を

していこうと思う。そして、いつも水の大切さを考えながら生活していこうと思う。

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