2014年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  菊地 ゆみ

【特別賞】僕の手汗

僕の手は、春でも、夏でも、秋でも、冬でも、常に手汗で湿っている。父の手も、少しは湿っている が、僕の方が三倍は湿っている。小さい頃は、大きくなったら必ずなおると信じていたが、中学三年生 になった今でもなおらないから、もうあきらめた。

常に湿っている僕の手は、ちょっと変わっている。秋になると、指の先から少しずつ皮がむけていく のだ。多分、手汗による湿り気にたえられなくなった手の皮が、新しい皮にリニューアルしているのだ ろう。冬には、手から湯気が出る。これを見た人達は、声をそろえて、

「気持ちわるー」

と言う。地味に傷付くし、こういうときは手汗がなかったらいいのにと本気で思ってしまう。 しかし、こんな手汗にもメリットはたくさんある。まず、手汗のおかげで乾燥とは無縁だ。しかも新 聞のページがめくれなかったり、スーパーのビニール袋が開かなかったりすることは滅多にない。母の 手が乾燥していて、たまにビニール袋をあけてと頼まれるが、その時は、手汗が役に立ったと、少しう れしい気持ちになり、手汗はあってもいいなと思える。

勉強をしているときは、残念なことに手汗に苛立つことが多い。例えば、キレイにかけたノートが、 手汗でにじんで読めなくなったり、そのページがふにゃふにゃになってしまったりする。それが、レ ポートだったりすると、かなり精神的なショックをうける。来年は受験が実施されるが、あっている答 えを手汗で消して、点を落とさないように気をつけていきたい。ちなみに、今も原稿が湿らないように 手の下にいらない紙をしいている。

前までは、手汗をバカにされると、

「手が乾燥している人がうらやましい」と思っていたが、今では、

「湿っていた方がいい」

と、本心ではないが言い返せるし、手汗をはずかしいものだと感じなくなった。何かと僕に迷惑をか ける手汗だが、

「手が湿っていないと、碧人(あおと)じゃない」

などとたまに言われるし、自分でもそうかもしれないと思うので、ここまできたら生涯手汗とつき あっていこう。

「手汗は、なおらないものだ」と思うことにした僕は、

「せっかく生まれもった手汗をいかし、何かに役に立てよう」とプラスに考えて、今は手汗を全く気に していない。だが、僕が生まれかわれるとしたら、手がある程度湿っていない人に生まれかわりたいと 思うし、少々手汗にはうんざりしている。なので、このありあまった手の水分を、自分の乾燥している 手以外のはだや、日々手の乾燥や、指先のひびわれなどで悩む人たちに分けてあげたいと思う。

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