2017年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  梅村 万里子

【特別賞】大切なキミへ

サラサラと音がする。小鳥のさえずる音、そして木々の揺れる音もする。眩しくて体勢を変えたいの

だけれど、体が重く、目を開ける力さえ残っていない。ぼんやりする頭を少しずつ回転させようとする

が、それもうまくいかない。その代わりと言ってはなんだが臭覚には問題がないようだ。緑の香り。お

日様の匂いがする。恐らくここは森の中なのだ。この世は音と香りで満たされている。何という幸せな

場所だろう?私はそう思って考える。どうやってここに来たのだろう?そしてどうしてここでこん

な風に横たわっているのだろうと。

久しぶりに見た夢は、私を少しばかり幸せにしてくれた。深呼吸をして、伸びをする。さっきの夢の

世界へさっそく戻りたくなる。私ならピクニックの準備をして、大好きな人と川のせせらぎを聞きなが

らおしゃべりをするだろう。湖面に映る月を見ながら夜通し語り合うのもいいかもしれない。とにかく

この現実から逃げ出せるものなら何でもしよう。この先三ヶ月間お休みがなくても構わない。大好きな

チョコレートをこの先ずっと食べられなくても構わない。その位、今の私にはこの現実が辛すぎた。

人は時として残酷だ。少し気をつけさえすれば、寒い日につける手袋程の優しさを分けてあげられる

というのに…。辛い時、悲しい時、私はいつも川を眺める。それでもどうしようもない時は、海を見に

行く。水は私の心を優しく包み、落ち着かせてくれる。母のお腹の中で優しく守ってくれていた記憶が

そう錯覚させるのだろうか?私を慰めてくれるのも、そっと寄り添ってくれるのも、そして幸せな気

持ちにしてくれるのも、いつも水だった。さざなみが動揺を流し、せせらぎが話を聞いてくれる。明け
ない夜はないと思わせてくれるのは、いつもそこだった。

私の大切な人は私を傷つけない。私の悲しみを共有し、癒そうとしてくれる。私の大切な人は慈しむ。

私の喜びを共有し、更なる幸せを与えてくれる。そういう人がいること。それだけで十分なのだ。そう

教えてくれたのは紛れもなく、キミだ。

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