【特別賞】水泳と私
「いやだ!泳ぎたくない」
とつ然、耳をつんざくような泣き声が聞こえてきた。見ると、小学二年生くらいの男の子とお母さん。
にぎっているお母さんの手を必死にふりほどいている。どうやら、お母さんは男の子とプールに入って
いっしょに泳ぎたそうだ。あの男の子、小さいころの私みたいとつぶやきながらその親子をぼんやり見
ていた。見つめながら、私は自分がまだ小学一年くらいだったころのことをしみじみと思い出していた。
それはプールにいった日の出来事だった。
私は水が大きらいだった。水の中に顔をつけることもできないし、五メートルも泳ぐこともできな
かった。なにより、学校の体育の授業でのプールはいやでいやでたまらなかった。しかし、小学三年の
とき、私は親のすすめで短期水泳教室に通い、その後、スイミングを始めることになった。私はやっと
のやっとで水に慣れ、四年生のころには、クロールや背泳ぎができるようになる。学校の記録大会でも
二五メートル泳げて好成績を残すことができた。
スイミングを習いはじめたおかげで、私は水と関わる大切さを学ぶことができた。そして泳ぐことが
なによりも大好きになった。六年生の春には、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ全て泳げるよう
になった。そして一〇〇メートル個人メドレーでも合格。合格した後は、五〇メートルのクロールのタ
イムを縮めるのに必死。二月にスイミングをやめるまでとても長い道のりだった。
スイミングを始めて、たくさん学んだ三年間だった。スイミングでしか会うことができない他校の友
達、個性豊かな先生たちとたくさん仲良くなれた。それに水泳というスポーツがこんなにも楽しいもの
だったなんて気づかなかった。三年間以上スイミングを習っていると銅メダルがもらえる。その銅メダ
ルには私の大切な思い出が入っている。あの三年間は私の人生の最高の思い出の一つである。
親子がひとごみの中に消えていく。私はプールサイドで泳ぎたくなって、ダッシュでむかった。あの
時の私は確実に最高の笑顔になっていたはずだ。私は水泳、つまり水のことが大好きなのだから。


