2016年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  西 のぼる

【準ざぶん大賞】また来てね

パシャッ。パシャッ。

おじさんたちが、カメラのシャッターをきる。

わたしも急いで、パシャッ。パシャッ。

「ほら、来たぞ」

点々に見えていた物が、ぐんぐん近づく。

パシャッ。パシャッ。うまくとれているか、心配になる。 「来た。来た」「今度は、多いぞ」

おじさんたちが、口々に言う。

わたしも思わず言った。

「おいで。おいで」

「二十羽はいるよ、お母さん。すごいね」

ここは、印西市本埜(もとの)。毎年一一月ごろ、白鳥がやってくる。シベリアから今年

は、六百羽も飛んで来た。

わたしの学校の近くの公園から林の道をのぼって、かわら屋根の家の横の道を進む。お寺

やおはかや、にわとりのいる農家をこえて一時間歩くと、本埜の村に出る。

使われているのか、いないのかわからないバスてい。

時こく表の字が白く見えなくなっている。

そばのさびたいす。すわるとこわれそう。

車も時々しかやってこない。田んぼの広がる古い村。

クアッ。クアッ。鳴き声が聞こえる。

何か動いている場所を目指して歩く。田んぼのまん中に、白鳥。 白鳥たちのいる所は、湖ではなく、田んぼ。

お米が育っていた場所に水をひき、白鳥が来るのを待っている。 「今年はあたたかいから、白鳥は少ないな」

「新がたで雪がふると湖がこおる。そうしたら白鳥がここに来る。天気予報を見て、明日は

何羽来るか、予想するんや」

おじさんたちが、いろいろなことを教えてくれた。

一九九三年に初めて六羽来たこと。えさをやろうとすると、最初はにげた。

出山さんというおじさんが、毎日同じ時間、同じ服を着て、えさをそっとやり続けたこと。

たくさん大へんなことがあったけれど、今では千羽をこえる白鳥が来る年もあるそうだ。

朝八時と夕方四時。えさをやる時間になると、北の方から次々と白鳥が、ここにもどって

くる。

えさにかかるお金もすごいそうだ。すぐ近くの小学生たちも、毎日世話をしたり観察した

りして、みんなで白鳥を守っている。

大きなくちばしの少し色のついた白鳥は気があらく、他の白鳥をいじめること。今年、こ

こで育った白鳥がどれか。

話を聞いている間も、白鳥たちがもどって来た。きれいにならんで。への字になって。

急におりてきたり、なかなかおりてこなかったり。とてもきれいだ。ずっと見ていたい。

白鳥さん、来年もここに来てね。わたしも来るよ。しずかな村で、これからも安心してす

めるよう、みんなでおいしいお米を作れる自然を守っていくからね。

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