ARTIST,  増田 守世

【特別賞】安島の海

私は海に囲まれて暮らしている。安島という静かな村。夕方になると、雄島とそれをつなぐ赤い橋と

海と夕日。私のちょっとした自まんだ。

夏休みの日課のラジオ体操。左手に東尋坊を眺めて自転車で公民館に向かう。正面から吹く南風は、

磯臭くて嫌いだ。せ中を押してくれる、林と海の匂いが混ざった風の方が私は好き。ゆるいカーブを曲

がると、あった!赤い小さな吹き流し。村の人だけがこの合図を知っている。今日もあるんだな、海

女漁。

村には、シワシワで元気な海女さんばあちゃんがいっぱいいる。漁は六月のワカメ漁から始まる。水

中マスクをおでこにのせ、黒いウェットスーツで丸いたらいをせ負って海に向かう海女さん達はかっこ

いい。船を操縦するのはじいさん達。海女さん達は、何度も何度も海に潜っては浮かんでと繰り返す。

まるであざらしみたい。帰ってくる船を迎える、ワカメ干し部隊の村人たち。船にはたくさんのワカメ。

あっという間に村中は、ワカメを干すむしろという敷物に埋め尽くされる。ワカメを干している間中、

何を話しているかさっぱり分からない安島弁でみんなが笑ってる。私も笑っていればそれだけで何か通

じているみたいだ。海の風と太陽の光をいっぱいに浴びて、ワカメが黒くカリカリになってくる。これ

が最高の海の贈り物。ごはんにふりかけて食べると、口の中は海に入ったようだ。甘くて少ししょっぱ

い。日本一の安島ワカメだ。

ラジオ体操をしている時も、海女さん達は海に入っている。八月はウニ漁。安島弁ではガンジョとよ

ばれている。今日もいっぱい採れたかな、ガンジョ。テレビで見るウニみたいに大きくない。黒くてト

ゲトゲの小さなウニをうまく割ると、わずかな黄色い身が取れる。海女さん達の指はれているよ。痛く

ないのかな。それでもばあちゃん達はやっぱり笑っている。私はガンジョはちょっと苦手。それよりサ

ザエの方が大歓迎。今日は何で頂こうかな。刺身!つぼ焼き!バター焼きがいいかも!

ラジオ体操の帰り道。

「今日もあっちいわぁ。泳ぎに行こうか」

と、いつもの約束。村の子供だけが泳ぐ小さな海岸がある。プライベートビーチみたい。今年はあの

遠い岩まで泳げるか、私の目標だ。

たくさんの海の恵みの中でくらしている私は幸せ者だと思う。大好きな海が、ずっときれいでありま
すように…。私もシワシワばあちゃんになったら海女さんになっているかもと思うと、少し笑える。

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