【特別賞】私の矢部川
今年も暑い夏の季節を迎えた。私は、毎年この季節が巡ってくる度になつかしさや悲しい感情にも包まれる。
私は、福岡県の八女市というところに生まれた。私の住んでいるところは、山に囲まれていて田んぼもたくさんあり、近くには矢部川が流れている。とても自然豊かな所に住んでいる。
私が幼い頃には、夏の日差しがまだ強くない朝方から、祖母と祖父と一緒に川へ行ったり親せきの子と一緒に日が暮れるまで川で遊んでいた。川の中に足を入れると冷たい水が熱くなった体を冷やし、ぬるりとした石の感触も時には新鮮だ。川を渡ってくる風は、気持ち良くて、時々、海とは違う川のにおいがする。目をつぶって耳をすますと浅瀬を流れる川の音は、ここち良い音でゴーっと聞こえてくる。そして、岩にあたるチャプンチャプンという音。遠くの方で魚がはねる音も聞こえてくる。ここに来ると、不思議と気持ちが落ちつき、いろいろな悩みも洗いながしてくれそうな気がする。私は、毎年夏が楽しみで待ち遠しかった。
しかし、今から六年前七月十四日九州北部豪雨により私の大好きな川の景色は、変わってしまった。川の水量は増すばかりで私が川の様子を見に行った時は、川の色は茶色になりとてもにごっていて流木が流れ、避難する道中も水が氾濫していて車もなかなか進まず、みんなあわてて頭が混乱するばかりだった。雨がやみ、川の水量も減った。しかし、被害はとても大きかった。堤防がくずれ、毎年見ていたあのきれいな川の姿もそこにはなかった。私は川を見て、いろんな思いがこみ上げてきた。悲しさや怒り寂しさいろんな感情があふれ涙が止まらなかった。
しかし、少しずつ気持ちが落ちつき、冷静な気持ちで川の様子を見ることができた。川の復旧作業の為に、作業員の方たちは朝早くから、夜遅くまで、冬の雪がちらつく中、一生懸命に元の川に戻そうと努力していた。堤防は、高く積まれ、コンクリートでしっかり固められ、私達の命を守る為に安心できる姿に変わった。当時の姿とは変わってしまったが今日も川は流れて行く。雨の日も晴れの日も。
私は、あの出来事から思う事が二つあった。一つ目は、川は時には恐ろしいものに変わるということ。二つ目は、一度起こってしまったことは、二度と戻らないということだ。
しかし、私は川を見ることが好きだ。だから、ずっと見ていたい。そして、この川を見守っていきたい。


