【特別賞】海・川と人の暮らし
僕は今年の夏に岩手県大槌町を訪れた。大槌町は海に面していて、三陸で有名なリアス海岸になって
いる。その海岸は『三陸復興国立公園』の一部で、とても美しい風景が広がっている。しかし、大槌町
も含めたこの『三陸復興国立公園』は、五年前に起きた東日本大震災で、津波などの大きな被害を受
けている。この大槌町では、最大二二・二メートルの津波が建物や人々を襲い、八〇二人もの人が亡く
なり、五五一人もの人の行方が未だわかっていないそうだ。
そんな多くの命を奪い、大槌の人々から生活の場までをも奪った大槌の海は、澄みわたり、透き通っ
たエメラルドグリーンをしていて、とても冷たく、とても美しかった。海は貝やうに、たくさんの魚が
いて、かきやほたての養殖施設もあった。東日本大震災の津波で荒れ狂った海も、今ではリアス海岸特
有の波のない穏やかな海になっていた。
また、川にも魅力が多くあった。川の水もとても澄んでいて、とても冷たかった。川底の石には川藻
が生えていて、水草もいたるところに生えていた。川に入ると、体長二〇センチメートルはあるヤマメ
がすぐ近くを泳いでいた。人間を見ても逃げなかったから、おそらくその川にそれまでに人があまり
入っていなかったということなのだろう。地元の人が釣りをするときも、魚がすぐに食いつくそうだ。
さらに、秋にはサケが遡上する。川も海と同じくらい美しいし、豊かな自然を持っている。
その川も、雨がたくさん降った時には、氾濫の恐れがあり、周辺住民に避難指示が出される。
こうした普段は穏やかで美しく、自然豊かな海や川が、災害となって人々を苦しめることがある。僕
は埼玉の市街地に住んでいて、そうした恵みや危険を身近に感じることはあまりない。
大槌町を含め、津波の被害を受けた所では、波を防ぐ高い防潮堤が造られている。そのとき不思議
に思ったのは、漁師さんが多く住む大槌町の沿岸の地区では、高い防潮堤を造ることを住民が賛成しな
かったことだ。その理由は、海が見えなくなるからだそうだ。海が職場の漁師からすると、海がいつで
も見えないと不安なのだろう。危険と隣り合わせにも関わらず、漁師たちは海辺に住んでいる。これか
らも海とともに生きていく覚悟があるのだろうなと感じた。
このように、恵みを与えてくれる反面、危険をもたらす海や川で生きている人は勇気があってかっこ
いいなと思った。人間は海や川からたくさんの恩恵を受ける。しかし、海や川は時には人間に危険を及
ぼす。これは、これから人間が海や川とつき合いながら生きていくには避けられないと思うので、そこ
もしっかりと考慮して海や川と付き合うべきだ。


