【特別賞】とうめいな糸
2022年7月26日
「今年はだめかもなあ」
おばあちゃんが言った。おばあちゃんとおじいちゃんは、トマトをつくっている。つくったトマトは
ケチャップなどに加工される。だめ、というのはきっと、トマトのこと。なんでだめなんだろう。
「今年は雨が少ないし、虫も多いから。虫に食べられたトマトなんて売れないよね」
おばあちゃんはそう説明してくれた。雨は空から降る大切な栄養だって、前におばあちゃんは言って
いた。梅雨入りしたってテレビでは言っていたけど、雨は全然降ってない。これじゃあ、本当にトマト
は枯れてしまう。
「雨が降らないときは、じょうろで水をやらないと。枯れたらトマト、とれないでしょ?」
水をやるって、この広い畑に?大変だろうな。家が二〜三個つくれそうな大きな畑に、手作業で水
をやるんだ。すごいなあ、おばあちゃんたち。そんな作業をしないとトマトは枯れてしまう。水は、ト
マトにとってそのくらい大切なんだ。 「初トマト!」
そう言ったおばあちゃんの手には、新鮮なトマトが一つ。そういえば、このトマトはケチャップにな
るんだっけ。台所に行くと、ケチャップや砂糖などが並んでる。このケチャップの中にも、おじいちゃ
んやおばあちゃんがつくったトマトが入っているかもしれない。そう考えるとすごいな、と思った。家
でつくったトマトが、形はちがうけど皆の家で食べてもらえる。おじいちゃんとおばあちゃんは、トマ
トで皆とつながっているんだ。
トマトは、水で成長する。水が、皆をつなげている。そう考えると、水が一本のとうめいな糸のよう
に見えた。


