【特別賞】優しさの泉
「その時、私は不思議な思いでした」
私は「吉岡泉」という泉がある地域に住んでいます。幼い時から見てきた泉は周りをぐるりとさくで
囲まれ、そこかしこに「危険」と書かれた看板がたっており「危ない」というイメージしかありません
でした。たまに聞く父の幼い頃の話ではよく、さくの穴をくぐり抜けては皆で遊んでいたそうです。で
すが私にはうまく想像できませんでした。
小学校三年生の時のことです。ふるさと学習で私達は吉岡泉のことを学び、そして吉岡泉のさくの中
に入ることになりました。私はその頃、泉がつくられた理由やそれがまたどんな結果を生んだのかもな
にも、知りませんでした。それで熱心にその学習に取り組んだことを覚えています。
だんだんと、学習に取り組んでいるうちに私の吉岡泉に対するイメージは変わっていきました。です
が、まだ少し「危ない」というイメージは残っていました。
そして、ついにやってきました。吉岡泉のさくの中に入るのです。最初はドキドキしましたし、少
しこわくなりました。ギギッときしむ音を立てて、さくのとびらは私達の前でゆっくりと開かれまし
た。そして、足を踏み入れるとそこには想像もできないような美しい泉が広がっていました。水はとて
も澄んでおり、周りにはたくさんの植物が生いしげっています。まさに父から聞いた話どおりの泉でし
た。不思議な思いに包まれました。こわいなどというイメージはすぐに頭の中から消えました。そして、
やっと分かりました。この泉は、この泉の美しさは、人の優しさでつくられているのだと。他の人のこ
とを思い、苦労して頑張ってつくられたから、この泉はいつまでも美しいのだと。人と人の優しさの結
晶です。
この泉は山下市太朗という方が川東の村々のことを思い、つくられました。今、世界にはまるで泥の
ような水をすすって生活している人や、満足に水がなく病気にかかり苦しんでいる人います。また、少
しの水をえるために日々争いが起こっている地域もあります。水は生きるのに不可欠なものです。植物
も魚も動物も皆、水がなくては生きていけないのです。それをめぐって争いを起こすのではなく、分け
合うのが、助け合うのが大切なのではないでしょうか。そうすれば、山下市太朗さんがつくったような
美しい泉が世界中にあふれると思います。


