2008年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  コジマ ナオコ

【ざぶん文化賞】命をありがとう

ザァバアァァァァッンッ僕は砂を思いっきり蹴り飛ばし、一直線に海へ跳び込んだ。

冷たくてヒンヤリする気持ちいい海の水。でも少し口に入るとスゴクしょっぱい。それに砂

がまじってジャリジャリする。でも僕は海が大好きだ。

 

海には、僕達人間のように地上で暮らさずに、水中という空気がない空間で暮らす違う世

界がある。僕等はそこでは暮らせないけれど、その海の中で暮らせる魚達はスゴイと思った。

 

ある日僕は、また大好きな海へ来ていた。すると僕の目の前に、生まれたばかりの魚の赤

ちゃんを狙う鳥がいたのだ。僕はとっさに鳥を追い払おうと走った。 「生まれたばかりの赤ちゃんを食べるなんてどうかしてるっ」

 

鳥はジロリと僕の方を睨み、飛んで行った。僕も飛んで行った鳥に舌を出し、挑発して

やった。その後僕は、魚の赤ちゃんを海へ返してやった。赤ちゃん達はスイスイと海の中へ

泳いで行った。僕はその日も、海で遊び泳いだ。

 

家に帰ると、母さんが夜ご飯の準備をしていた。僕は遊び疲れてお腹がペコペコで、準備

してあった食卓を見た。今日のおかずは魚だった。僕は何も考えずに、 「いただだきますっ」

とハシを早速動かし、ご飯を口の中へほうばった。お腹が減っていると、何でもモノスゴク

おいしく感じる。とてもおいしかった。

 

僕は疲れて、すぐにベッドへ倒れ込み寝てしまった。そして僕はとても不思議な夢を見た

のだ。なんとその夢には、今日出会った鳥が出てきたのだ。その鳥は僕にこう言った。

「お前は生き物を口にする時、何も考えずに食べているのか?」 と。僕は、

「考えるって…おいしいなぁとかかなぁ?」

少しマユにしわを寄せ答えた。鳥はあきれたような顔で、

「やはりな…よく聞け小僧。生き物を口にするということは、その方の命をいただくことな

のだ。わかるか?」

と僕に問いかけた。僕が、

「はっ、はい、わかります」

と答えると、鳥は少しうなづき、また話し続ける。

「命をいただくのだから、口にする時は感謝してから食べなさい。わかったな?」

「はいっ」

「よし。では食べる前には『命をありがとう』と心の中で言ってから、食べるといい」

「はっ、はい、わかりました。ありがとうございます。ムニャムニャ…命をありがとぉムニャ

ムニャ…」

ガバッ!僕が目を覚ますと、もう朝だった。 「夢…?」

僕は頭をポリポリかきながら起き上あがった。どうも今の夢が本当に鳥に言われたような感

じがして、ものすごく不思議だった。

「命をありがとう…かぁ。確かにそうだよなぁ…」

あごに手をあてて僕は改めて考えてみた。「よく考えると、モノスゴク大切なことを教えて

くれたんだなぁ、あの鳥」

 

お腹が減ってきた。そろそろ朝ご飯の時間だろうと、僕は下へ降りた。今日のおかずは鶏

肉の野菜炒めだった。

「鶏…肉…」

僕が呆然と立っていると、

「あら、おはよう」

母の声だ。

「お、おはよう」

僕はぼけっとしていた。

「何してるの、早く食べちゃいなさい」
と言われ、やっとイスに座った。そしてハシを持ち、口の中へ鶏肉を入れようとした瞬間、

夢の中の鳥の言葉が僕の頭をよぎった。はっと僕はハシを置き、心の中で、

「鳥さん、命をありがとう」 と言った。

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