【ざぶん環境賞】共に得てきたもの
「今日は、ホタルん多かばい」
頭の上でくるくると飛び回る子虫たちを、手で払いながら祖父は言った。きっと夜中には
雨が降りだすのであろう、虫はしつこく祖父の頭につきまとっている。私が幼いころから、
祖父が「予言」する日はいつだってこういう日。だから、六月の暗い空とうらはらに、私の
心ははずんでいた。
目の前をかけぬけてゆく「彼ら」が、生きているように感
じられるのは私だけだろうか。
岩とぶつかっては、とびはねるようにしぶきとなり、周りの豊かな風景を小さくとじこめ、
また走りだす。強い太陽の光を浴びて、キラキラと輝く水面は、すみきっていてやわらかい。
やさしく、時に強く流れてゆく。「彼ら」は、本当に生き生きしている。そんな美しい川と、
川を囲むように並んだ杉達が、ホタルを育て、見守ってきた。生まれた時から死をとげるま
で、川との縁が切れることのないホタルは、本当にきれいな川でなければ生きてゆくことは
できない。また、大雨や台風などの災害は、ホタルの卵を流してしまうため、災害の様子に
よっては、ホタルに大きな影響がでる。それでも、この、町で「ホタル」という存在が町の
シンボルとなっているのは、この生き生きとした川が本当にきれいであり、ホタルを守って
きたという証だ。
初夏、川の辺りはホタルの光を一目一見ようと、人があふれかえっている。それでも、川
にごみ一つないのは、町の人達がボランティアとしてごみを拾うからだ。また、それ以前に
ごみを捨てていくような人間が少ないからでもある。ホタルを愛することで、守り、うけつ
いできた「きれいな川」は、ホタルを育て、守ってくれる。ホタルが生きるこの町を、私達
はほこりに思っている。人と川との間に生まれたそんな関係も、知らぬ間にうけついだ私達
は、共になにかを得てきたと思う。
「うわ、やっぱりじいちゃんの予言は当たりばい、えらいきれいかねー」
梅雨の時期の中でも、雨が降りきれずにいる夜はチャンスである。そこには、都会のきら
びやかな夜景にも、クリスマスのイルミネーションにも負けない光の世界が、扉を開いてい
る。数々の光には、静かでありながら有無を言わせぬ力強さがあり、心がだんだんとおちつ
いてゆくのが感じられる。そして、休むことなく流れゆく「彼ら」に映るホタルの光は、さ
らにやさしく、たのもしく見える。
「来年も、見にこようね」
そんな観光客の一言がうれしいのは、きっと私達だけではないだろう。


