【特別賞】ヤゴの楽園
僕の祖母の家は北海道にあり、夏休みや冬休みには祖母の家に、親戚やいとこがみんな集まる。普段
は本州に住む僕やいとこにとって、北海道の祖母の家に行くのは特別なイベントで、僕は、とても楽し
みにしている。
祖母の家から二キロメートルぐらいのところに川遊びができる公園がある。僕やいとこは、毎年その
川に遊びに行くことにしている。その川はせいぜい五メートルくらいの幅で、大きな石がごつごつして
いるところがあったり、小石が敷き詰められたようになっているところがあったりする。川の水はとて
も冷たくて、裸足になって川に入ると、あまりの冷たさで震えるほどだ。母の話では、雪解け水が入る
春には川に入れないほど冷たいのだという。川にはたまに魚が泳いでいることもあるし、川の周りには
オニヤンマやギンヤンマがたくさん飛んでいて、川の石をひっくり返すとたまにヤゴが見つかることも
ある。
いとこが、石をひっくり返して、僕を呼んだ。 「こっち来て、見てみて。なんか虫がいるよ!」
いとこはまだ小さくて、虫を捕まえるのは苦手だ。だから僕を呼ぶのだが、僕もあまり虫は得意なほ
うじゃない。でも、虫をつまんで、虫かごに入れてあげると、とても喜んだ。
母の話では、この川の上流はもっとヤゴがいて、母が子供の時にはよく採りに行っていたらしい。た
だ、川の上流はうっそうとした森林になっていて、たまにヒグマも出没するような場所だという。僕は
ヒグマと聞いて怖くなったが、いとこにたくさんのヤゴを見せるために、行ってみようと思った。母に
案内役になってもらい、いとこを連れて歩いて行ってみることにした。ところが、歩いて五分としない
うちに、上流への道は細く、暗くなってきた。いとこは急に怖くなってきたらしく、
「ヤゴはいいから、もう帰りたい」
という。仕方なく、僕たちは来た道を戻ることにした。確かにうっそうとした森は、昼間でも暗くて
怖かったが、その先にヤゴの楽園があることを想像したら、僕たちが荒らしてはいけないような気もし
て、戻るのも悪くない気がした。
この川の水は下流にある浄水場で水道水として供給されていて、祖母の家の水道の水もこの川の水だ
と聞いた。あのうっそうとした森林は水源保全林といって、水源を守るためのものらしい。祖母の家の
おいしい水はこの森林のおかげなのだろう。ヒグマは怖いけれど、森林を守る大事な警備員みたいなも
のかもしれない。これからもずっとこの水源を守っていけたらと思う。


