2013年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  アマヤギドウ ジュン

【ざぶん文化賞】砂浜の約束

俺は深沢武。無職。五歳のとき母親を亡くし、今は親父とくらしてる。今すぐにでもくさい

ジジィとの共同生活から逃げたいし、漁師になるしかないのかな…。二十だし。

俺は深沢剛太。漁師。今はスネかじりのバカ息子と豚小屋のような家に住んでいる。今すぐ

にでも武には漁師になってほしいが、やる気はなさそうだ。死ぬ前に何とか…

一、終わりの始まり

俺と明美が出会ったのは中学生の頃だった。転校生として俺の目の前に現われたのだ。俺の隣

の席に座り、「よろしく」この笑顔に一目ぼれしてしまったのだ。二年に及ぶ猛アタックの末、付

き合うことに成功した俺は、永遠の愛を誓った。成人になり俺と明美は結婚した。武が生まれた

のはそれから二年後のことだった。漁師の俺はほとんど明美や武に会えない状況だった。でもほ

んの少しの会える時間を大切にし、休日をもらい三人で遊園地に行ったりと、幸せの絶頂だった。

しかし明美のがんが見つかったのもその頃だった。医者には「末期ですからそう長くは…」と

言われた。俺の中には絶望と後悔がわいてきた。「もっと近くに居てやれば…」そう思うと涙し

かでてこなかった。明美は「大丈夫だから心配しないで」と病室のベッドでもいつもの笑顔だっ

た。だがその日は待ってくれなかった。最後に明美は俺の耳元で話した。
「あなた二つお願い事があるの。一つは、あなた漁師なんだから、これからも命の海を守ってね。

 

もう一つは…。武を頼んだから…ね」そう言うと明美はいつもの笑顔で、眠った。

二、砂浜の約束

俺は中学生になった。これが反こう期というものなのか、俺は毎日のように親父とけんかして

いた。たとえば俺は水を出しっぱなしにしてしまうクセがあった。それに気づくと親父は「水を

大切にせんか!」と同じことをいつも言ってくる。そこで俺は「別にいいだろう!」と言う。こ

のくりかえしだ。あと俺がいらつくのはそれだけではない。親父は心配させないでおこうと病気

を隠しているのだ。大量の薬を飲むところを俺は見たのに…。

そんなある日、俺は親父が嫌になり家出した。家の近くの砂浜にいると、親父は心配したのか

さがしに来やがった。俺は来るなと言ったが、親父はそれをさえぎるように抱きしめ、こう言っ

た。「武。約束しろ。この海を大切にしろ。あとな…あいつを悲しませるような人間にはなるな

…」俺は意味も分からず聞くことしかできなかった。

俺は成人になり一年が経った。それはいきなりの事だった。親父が死んだ。がんだったらしい。

最後の言葉もなく。その後、俺は漁師になった。海に潜るとそこには命が広がっている。何だか

それを見てると、あの時の約束の意味が少しわかった気がした。

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