2018年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  キクチユウタ

【特別賞】水のかべ

ずっと泳げなかった。水の中でうかぶ事やビート板を使えばどこまでも進めるのに。でも、けのびが出来なかった。ほかにも出来ない人はいた。けれども、やっぱりくやしかった。いつまでもけのびのかべの前にいるのはいやだった。ゆう気が出なくて、けのびの止まり方だってわからなかった。先生にいつまでも手つだってもらうばかりじゃせい長出来ない。友だちに見てもらったけど、出来なかった。出来る人を見ると、うらやましくてしょうがなかった。「こわい、こわい」心の中でその言葉が何度もよぎる。けのびをやりたい気持ちをかき消す。ビート板で感かくをつかんでからやってみても、ふ安がじゃまをする。そのくり返しがつづいた。

プールのじゅぎょうは楽しい。だけど、泳げないより泳げる方がもっと楽しいと思う。

そして、三年生になった今年。プールのじゅぎょうが始まる前の日曜日。わたしは、お父さんと弟といっしょに家の近くのプールに行った。けのびのれん習をしたけど、できなかった。なかなかゆう気が出なくて、ふ安だった。お父さんにも「がんばれ!」って言ってもらったけどやっぱり水がこわかった。そして、学校でプールが始まった。こわかったけど、「何だかゆう気が出そう」そう思っているうちに、あっと言う間にプールのじゅぎょうのさい終日。そして、さい後のれん習時間。友だちにたくさん教えてもらった。わからないこともわかってきた。そして、けのびで出せるかぎりの力を出した。こわい気持ちをぐ~んとおし切って。

「出来た!」わたしにも出来た。大きなよろこびがこみ上げて来る。とってもうれしかった。何も言えないくらい。わたしは、けのびのかべを乗りこえた。「よし、次はクロールだ。二十五メートルがんばろう」そう思えた。

今年さい後のプールのじゅぎょうは、わたしにとってわすれられない大切な時間になった。

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