【ざぶん文化賞】川のある暮らし
四国三郎、吉野川。私の住む地域は、この大きな川の豊かな恵みを受けて発展してきた町の一つだ。この川の反らんでたくわえた肥えた土地で米や野菜、そして藍を育て、この川の流れを利用して藍を運び栄えた。私の家の前にも藍商人たちがうだつを上げた屋しきが並んでいる。川は、昔も今も人々のくらしの中にある。
私は、川の景色が好きだ。朝日にも夕日にも映え、とても絵になると思う。小さい頃はよく祖父に連れられ、兄姉と愛犬の散歩に行った。川からの季節を感じられる風やにおいがとても心地よかった。ある時には、両親と潜水橋を渡っていて白鳥を見かけたことがあった。一瞬目を疑ったが、優がに川辺を行く姿が印象に残っている。それから、川カヤック体験に参加したこともある。川の流れにのってスゥーとカヤックで進むと気持ちよかった。ぐんぐんこいでずんずん進みたくなった。反対にこぐのをやめると優しい川もにプカリと浮いて、川の中の様子をながめることができた。大きな石、水草やこけ、小さなすばしっこい魚たち、キラキラした水も。川に包まれている不思議で心地よい感覚を存分に味わうことができた。私は、川のよさをいっぱい体感している。
しかし、この夏私は、その吉野川に自然の力の大きさと水の怖さを見た。西日本豪雨でたくさんの雨が降り、いつもは穏やかな川がだく流になり、きれいな川原も車が行きかう潜水橋も後かたもなく飲みこみ、堤防のすぐそばまで迫って川幅いっぱいにゴウゴウと流れていた。初めて見た。怖さを感じた。大きな流木、人間が使っていたであろうポリ缶や器具、大きなうねりとなって何もかもを流していた。また、流れこむ小さな支流へも逆流し始めて、大きなポンプで水をくみ出しても、間に合わないくらいだった。その様は、私の知っている吉野川とは別人みたいだった。堤防下の高校生が練習しているラグビー場も、お年寄りが楽しんでいるゲートホール場も、大勢でにぎわう花火大会の場所もみんなにごった茶色の世界の中に沈んでいた。初めて川の怖さを体験した。
けれど、私は川のあるこの町が好きだ。川の恵みを生かして発展し、観光客も多いこの町がいい。観光ボランティアガイドをしていた祖父は、うだつの古い町並みを川とセットで案内していた。この町のはん栄は川と共にあるからだ。その証拠に、小学校から高校まで、川は校歌の中にうたわれている。そして、この土地で生まれ育った私たち子どもが歌って、受けついできた。ひびきくるさやけき音に育まれ、たゆまず遠きにいたれと。川のある環境をこれからも大切に、川の流れに自然と恵みを感じて過ごしていきたい。そして同郷の人や訪れる観光客にも川のよさを感じてもらいたい。そして、私の子ども達にも私が体験してきたことを伝え、共有し、川のあるくらしを守って引きついでほしいと思う。


