2018年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  原田 維夫

【準ざぶん大賞】水人間

町に、「水人間」が現れた。

彼らの外見は、人間とはそんなに違わなかった。男も女もいたし、老人も赤ん坊もいた。違うのは彼らの目だった。彼らの目は、とても深い水の色をしていた。吸い込まれそうな青だった。その煌めきは見る者を魅了し、その深さは見る者を不安にさせた。

彼らがどこからやって来たのかは分からない。いつのまにか町にいて、いつのまにか職を得て、いつのまにか暮らしていた。

そのこともあって、町の人々は水人間を敬遠していた。水人間は町はずれに住んでいたし、むこうから積極的に関わりを持とうとはしていなかった。ただ黙々と仕事をし、町はずれの家に帰る。彼らの生活はその繰り返しだった。

町はずれには湖があった。町の人々は、水人間はそこから現れたのだと噂した。

月日がたつにつれ、水人間たちに対する風当たりは強くなっていった。中には水人間を強く嫌悪する一派も出てきた。

水人間を嫌悪する人々は、無視する、仕事を回さない、などありとあらゆる嫌がらせをした。しかし水人間達は顔色一つ変えなかったので、そのことが余計に町の人々を苛立たせた。

そして、ある夜、何人かの人影が町はずれの水人間達の住む場所に入っていった。しばらくすると炎があがり、人影は走り去っていった。町の人々はそれを見ていた。ただ見ているだけだった。

翌日、町の人々は水人間たちの住居を見に行った。それはある程度広かったし、入ろうとする者がいなかったせいで、終わったのは夜だった。水人間達はいなかった。消え失せたのだ。

町の人々は得体の知れない隣人がいなくなったことをうれしく思いながら皆で帰路に着いた。だれかが叫んだ。湖のほとりには、たくさんの水人間が立っていた。彼らの体はぼんやりと青く光り、湖も同じ色に輝いていた。

水人間達は町の人々を見つめながら、無表情で一人ずつ湖に飛び込んだ。とぽん、とぽん、とぽん、とぽん……町の人々は動けなかった。最後の水人間が飛び込んだとき、水が渦を巻きはじめた。人々は走り出した。

恐怖の叫び声をあげて。しかしもう遅い。水が町を呑み込んだ。なすすべもなかった。町の人々は、今まさに呑まれようとしているとき、自分を見つめる青い煌めきを見たように思った。

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