2018年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  羽場 文彦

【特別賞】私たちをつなぐ水

私の祖母の家は、里山、山のふもとに田畑が広がり、その田畑を縫うように湧水を源とした小川が穏やかに流れるのどかな場所にあります。幼いころから一緒に田畑に行って遊び収穫の手伝いをしたり、小川で魚をみつけて喜んだり、野菜の泥をおとしたり、時にはそのまま小川に入って手や足を洗ったりして気持ちのよい水遊びの時間になっていました。また、井戸水をくみ上げることもでき、夏には冷たい水で野菜を冷やしたり水浴びをしたり、冬には温かい地下水は融雪にも役立てたりしています。このような里山での美しい田畑や小川での幼いころからの体験が、今も私の心の中の原景色となっているのだと感じています。

祖父はこの地で生まれ育ったこともあり、この地をよく知り尽くし自然の中で生活することをとても楽しんでいるように思います。春には山に入って山菜採り、竹林に入ってたけのことり、シイタケの栽培をすることがあります。そして夏には川で鮎釣り、秋になると、里芋の収穫の後には、自分で作った木製の水車のような道具を小川に持っていって取り付けます。水の力で水車がくるくる回ると中の里芋がコロコロ回転し泥がきれいになる光景もよく見ました。年末になると山で木や竹をとってきて、様々な大きさの新年の門松をたくさん作り、保育園などの様々な施設や家々に持って回ります。私は、自然と共にある暮しの豊かさを祖父母から感じています。

ところが最近、この美しい里山の風景に変化が見られるようになりました。耕作をやめた田や畑が荒れた草原になり、耕作をやめてシートをかぶせられた場所も見られるようになりました。昔からの小川はコンクリートに深く覆われ、山からの動物が農作物を荒らす問題や、その対策に金網や柵をめぐらす景色も見られるようになりました。時々祖父母の家を訪れるたびにこのような美しい景色が少しずつ変化してきていることを残念に思います。

では、どうしたらこのような美しい景色や豊かな暮しを持続させていけるのでしょうか。

そのためには、山の木々を大切に育て手入れすることが大切なのだそうです。水を吸収し、最近よくある豪雨による土砂災害や水害を防ぐ治水のためにも森林の手入れは重要なのだとテレビで見ました。農村では高齢化が進み、なかなか手入れが行き届かない山や田畑が増えてきています。だから今は、社会全体で行動を起こしていかなくてはならないのだと思います。

私たちの里山は、いつまでも美しい山々があり、そこから清らかな川が流れ、その中に水田や畑が広がり、これらとともに人々が豊かに暮らす場であってほしいと願います。里山と人々の暮らしをつなぐ「水」がいつまでもきれいなものであってほしいと願います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です