【特別賞】生き物たちの棲み家を守る
目の前には瀬戸内海のまっ青な海が広がっている。マリンライナーは海の上を走る電車だ。四年ぶりの高松に早く行きたくて、ぼくは落ち着かなかった。
小学校三年生までの五年間をぼくは四国の高松市で過ごした。ぼくの住んでいたマンションのそばには春日川という大きな川が流れていて、その河口には干がたが広がっていた。干がたというのは潮が引いた時にできる平らな場所だ。小学校三年生の時、学校の授業で干がたの生き物を見に行った。小さな魚やエビやハゼもいた。その中でも先生がとてもめずらしい生き物だと教えてくれたのが、ハクセンシオマネキという小さなカニだった。
ハクセンシオマネキは片方のはさみだけが体と同じくらい大きく、そのはさみをブンブンふり回す姿がおうぎを振っているように見えることから、この名前がついたそうだ。
ハクセンシオマネキは、人間の気配を感じると、すぐ巣穴にもぐってしまう。ぼくが近づくと、一瞬で巣穴に逃げ込んでしまう。そして、しばらくするとまた、そーっと出てくる。ぼくはそれがおもしろくて、何度も繰り返して遊んだ。高松に行ったら、絶対に春日川のハクセンシオマネキを見に行くと決めていた。
高松駅から十分、四年前と全く変わらない風景がそこには広がっていて、ぼくは車を降りると急いでハクセンシオマネキを探しに行った。
ハクセンシオマネキは、潮が引いている時にしか見ることができない。探すコツは、巣穴を見つけることだ。黒いツブツブがいくつか固まっている。すぐに下に降りて、巣穴を探し始めたが、なかなかみつからなかった。巣穴どころか生き物の気配もない。それどころかそこには沢山のゴミが流れてきていた。
実は四年前に先生が、ハクセンシオマネキは絶滅危ぐ種で年々数が減っているとおっしゃっていた。原因は人間の出すゴミのせいだ。
ハクセンシオマネキはどこに行ってしまったのだろう。結局、三十分程探しても見つけることはできなかった。四年前はあんなに沢山いたのに。もしかしてぼくの想像以上に川の生き物たちの生活環境は悪くなっているのかもしれない。川の中にはお菓子の袋や車のタイヤが捨ててあった。どんどん川が汚されていくのが悲しかった。そのゴミは確実に生き物たちの住みかをうばっているから。
だからぼくは、みんなに知ってもらいたい。川を汚すことで、どんどん川の生き物たちがいなくなっていることを。それを守れるのはぼくたち人間しかいないということを。
ぼくの住む金沢の川も、どこかで四国の海とつながっている。日本中どこに住んでいても川をきれいにする活動はできるはず。だからぼくは金沢の川からきれいにしていきたい。それがきっと、高松のハクセンシオマネキに届くと思うから。


