2019年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  大石 亜依

【特別賞】祖父と僕と稲作

僕は夢を見た。懐かしい夢だった。

「豪海、じいちゃんとドライブ行こう」

そう言うと、寝ている僕を抱きかかえ、祖父は車の助手席に乗せる。

ドライブのコースはいつも決まっていた。水田の水見回りだ。行く順番も決まっていた。車を走らせながら、祖父は僕に言う。

「今日みたいに寒い日は、深水管理だ」

又別の日、

「今日みたいに暑い日は、浅水管理だ」

「これ以上暑い日は、かけ流しにするんだ」

意味もわからず僕は、

「うん」

と、うなずいていた。

時には、水が流れていないと、

「水、来てねぇなー」

と言い、水路をさかのぼる事もあった。祖父は何十年もの間、そうやって米作りをしてきたのだろう。今思うと、祖父は根っからの稲作農家だった様な気がする。

この年になって初めて、水田は、水量で地温を管理していたのだと理解できた。恐るべし「水の力」である。

「浅水管理」

気温よりも水温の方が低いので、水量を少なくすることで、稲苗に温かい空気を送り苗の成長を促す方法。

「深水管理」

気温が高いので、水量を多くすることで水温が上がりすぎず、稲苗が暑さのため枯れないようにする方法。

「かけ流し」

暑さのため、どうしても水温が上がってしまい、稲苗がダメージを受けてしまうので、水を動かし水温の上昇を抑え稲苗を守る方法。

僕たちは昨年・今年と猛暑日が続き、エアコン無しの生活は考えられない。暑さを我慢していた人たちが、熱中症にかかり、命を落としたりもしている。そんな中、暑さと戦い続け、稲穂を出し、秋には稲穂を実らせる稲はすごい。それを管理し続ける稲作農家の皆さんもすごい。

自然の力は、絶対です。逆らうことは出来ません。しかし、逆らわず、逆手に取ったり、よりそったりしながら農業を営む人の知恵はすばらしい。

僕の将来の選択肢に、稲作農家も入っている。僕に出来るだろうか?

現在は農業も「バイオ」の時代で、工場で野菜が出来る時代になってきている。近い将来、稲作も工場で行われるようになるかもしれない。それでも水だけは、必要不可欠だと思う。僕は、出来るなら太陽の光を沢山浴びた野菜や、米が食べたい。

「おじいちゃん、今は空の上から水の見回りしていますか?」

「もう少ししたら、僕が見回りするからね。安心してね。そして僕を見守ってね」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です